福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

アルジェリア人質事件での日揮の対応で考えたこと

 悲惨なアルジェリア人質事件を報告する日揮の川名社長、そして遠藤広報・IR部長に、武士道を体現した凛とした日本人の姿を見た。マスコミが日本人の安否ばかり気にしている中、「外国人3名の安否が確認できていない。78名全員の安否確認をする。最後の一人の確認ができるまで、派遣した副社長らはアルジェリアから離れない」と、同僚を失った悲しみをこらえながら語る姿は、芥川龍之介の短編小説『手巾』(ハンカチ)を思い起こさせた。この小説は、若くして息子を亡くした母親が、息子の恩師にその死を報告する表情が穏やかなものであったが、テーブルの下でハンカチを握り締めた手が激しく震えていたという話で、自らの感情を押し殺しながら他者を慮る「美しい日本人」を描いたものだ。
 それにしても「脱原発せよ」とか「原発を再稼働させよ」と原子力政策をめぐるさまざまな議論があるが、我が国のエネルギー供給は命がけで中近東や北アフリカから石油やガスを開発し供給する日本人、そして共に働く外国人がいて成り立っていることを、決して忘れてはならない。エネルギー安全保障にせよ、食料安全保障にせよ、善しあしは別にして、それを支えるグローバル企業によって支えられており、それぞれの企業は厳しい国際環境の中でそれぞれの国と手を携えながらそれぞれの国に溶け込み、日本経済とそれぞれの国の経済発展に貢献している。今回の事件を通じて私たちは、単に事件に巻き込まれた日本人がいるのかどうかということではなく、そのような国際環境と日本がつながっている現実をしっかりと認識しなければならない。
 私の両親が数年前JICAのボランティアで赴任していたシリアは、かつてのアラブの雄として中東で重要な役割を果たす国である。住んでいたホムスという美しく静かな街は、現在最もひどい内戦の殺戮の舞台となっている。選挙に落ちて浪人中だった私が訪れたとき、日本人というだけで、みんなが親切にしてくれ、日本の技術や経済に敬意を払い、アメリカや中国とは違う独自の役割を期待して熱く話しかけてきてくれた。あの人たちはどうしているのであろうか。日本人が犠牲にならない限り、なかなかそうした状況が報道されることはない。
 「第三の開国」などといきり立っていた愚かな首相がいたが、国家戦略とかのたまう政策論議に、あまりにも内弁慶な議論が多すぎないか。TPPをどうするかという議論の前に、私たちの感性自体の開国が必要なのかもしれない。-----