福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

消費税8%への引き上げ決定

本日、安倍総理は正式に来年4月から消費税を5%から8%へと引き上げることを表明した。この時期の消費税増税がせっかくのアベノミクスの明るい経済の見通しの先行きを暗いものにしてしまうのではないかと、総理の周辺も相当悩んだことであろう。私は、依然今の時期の増税の判断には反対である。なぜなら、現在の景気の状況は決して回復したと言えるものではなく、たとえてみれば高熱の患者が抗生物質を飲んで熱を下げているような状況にすぎないため、この時期の増税は橋本政権の5%の増税以上に急速に景気を悪化させる可能性が高いからだ。増税によって景気が悪くなれば当然税収は減るから、財政の再建にもつながらない。そればかりか、そもそも今回の消費税増税は財政の再建につながるような財政構造の転換に資するものとはなっておらず、消費税の税率を上げることだけが自己目的化してしまっていることも大きな問題である。

 確かに4-6月期のGDPは2次速報値で年率換算3.8%と見掛け上は増税の条件を満たしているように思える。しかし、その成長の寄与度の半分は公的需要、すなわち主にアベノミクス第2の矢である公共投資であり、財政再建を目指した増税なのに国債を発行して空前の公共投資を行って帳尻を合わせているのはタコが足を食べているようなものにすぎない。個別の統計を見てみると、景気の先行指標といわれる機械受注統計は、6月が-14.3%、5月はプラスで12.0%、4月は-14.3%とほとんど伸びていない。景気の一致指標といわれる鉱工業生産指数も8月が-0.7%、7月は+3.4%、6月は-3.3%とこちらもほとんんど伸びていない。すなわち、統計上のGDPの伸びは公共事業によるドーピング効果が大きく、実体経済における生産は伸びておらず、したがって将来の生産増に向けた設備投資の動きも極めて弱いものとなっているのだ。経済理論上、経済成長は①投資の増加、②人口の増加、③技術のイノベーションのいずれかによるものとなるから、民間投資が伸びない限りの一時的な成長は、持続しえないバブルとなってしまう。今のまま、実体経済が成長しない中での消費増税は、消費を冷え込ませ、民間投資が減退し、再び深刻な低成長の時代をもたらす可能性が強いのだ。私なら、アベノミクスの効果が生産の増大とそれによる民間投資の拡大につながるまで判断をもう半年から1年伸ばしただろう。

 一方、今回の増税にあたって安倍総理は5兆円規模の経済対策を年度内に策定することを表明している。また、復興財源のための特別法人税の1年前倒しの廃止にむけた検討も表明し、さらには法人税の実効税率の引き下げにも意欲を示している。消費税増税を見越して平成26年度予算では史上空前の約100兆円の概算要求が出されているにもかかわらず、それに上乗せした経済対策をしても財政を悪化させる効果はあっても、景気浮揚効果はほとんどないであろう。これまでの消費税を増税する時には増税によって吸い取られる民間需要に相当する額の財政出動を行ってきたが、政府が行う財政出動には必ず非効率な「政府の失敗」(言いかえれば「無駄遣い」)が伴うから、増税分に匹敵するだけの経済効果は挙げたためしがない。財務省は消費税の税率アップという数字上の成果を取るために、あまりにも与党を甘やかせすぎていやしないか。そもそも、私が現職の時もさんざん議論したが、復興増税などというものは必要はないものなのに、国民の「東北の復興のためなら仕方ない」という絆の精神につけこんで消費税増税が実現しなかった場合の保険として導入した復興増税の廃止などは、財務省にとっては屁でもあるまい。また、おそらく消費税増税に慎重な総理のブレーンは経済産業省の関係者だろうが、悲願の法人税の実効税率下げというニンジンがぶら下がった途端、というよりは消費税増税に協力する見返りとしての法人税減税の取り引きの舞台ができた途端に、消費税増税路線に総理周辺は舵を切り始めたのだ。

 こうして見てみると、今回の消費税増税は、消費税の税率アップという目先の成果を求める財務省、政権獲得後の大盤振る舞いをするための財源がほしい与党、法人税減税に向けた確かな足がかりがほしい経済産業省という利害関係者すべてが何かを獲得する見事な調整の結果実現したものであることがわかる。そして、我が国が失ったことは、せっかくの本格的な景気回復の芽を摘み取ってしまったかもしれないこと、毎年社会保障費が構造的に増大していく中で財政構造の本質的な改革をすることからまたしても逃げってしまったこと、そしてあれだけ消費税増税に慎重だった安倍総理が結局官僚組織の掌の上で踊っているだけであることがわかったこと、なのではないか。いずれ今回の消費税増税の顛末は、国民の評価にさらされることとなり、政治の根本的な変革が必要であることに国民が気づいてくれるものと信じたい。

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