福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

検察庁改正法案に関する私見

〇様々な立場の国民が、国会で行われている法案審議について声を挙げることは歓迎すべきことだ。この問題について、皆さんの判断の参考になればと思い、若干の私見を述べたい。

www.tokyo-np.co.jp

 検察官の定年延長問題がこれだけ注目されているのは、黒川氏という安倍政権寄りの判断をし続けてきたと言われている(私自身、そのことは霞ヶ関内部から複数証言を得ている)東京高検検事長を、現行検察庁法では認められていない(裁量による)定年延長を行って、検察トップの検事総長に就任できるようにしたことに端を発している。(以後、「定年延長」と「定年年齢の引き上げ」を区別していることに留意いただきたい。)

 なお、議論の前提として、たとえ今回の改正法案が成立しなかったとしても、脱法的な法解釈によって行われた黒川氏の定年延長による検事総長就任は法的には止められないことは、確認しておきたい。

 私は、時の最高の政治権力とも対峙すべき検察官人事が、時の政治権力の力で歪められるような制度にしたり、そのような人事を行うことには、当然絶対に反対である。一方、国家公務員の定年年齢の引き上げ(人件費等が財政を圧迫しないことを厳しくチェックされることを前提とする)に合わせて、検察官の定年年齢の引き上げを行うことは、賛成である。

 一番の問題は、これまで検察庁法で認めてこられなかった現行国家公務員法第81条の3「定年による退職の特例」に基づく定年の延長と同様のものを新たに検察官にも可能とすることである。(黒川氏の場合は、検察官の任免を定める検察庁法で認められていないにもかかわらず、一般法である国家公務員では認められているという脱法的詭弁で定年延長を行った。)

 国家公務員法では「任命権者は・・・その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは」定年延長できるとしている。検事総長の場合、任命権者は内閣だ。

 検察官は、場合によっては内閣のメンバーそのものを訴追する立場になる可能性があるから、これまで「定年による退職の特例」を認めてこなかったのであろう。今回の改正法案が成立すれば、「公務の運営に著しい支障」が生じることがないように、内閣に捜査を及ぼさない検事総長を定年延長させようとか、新しい検事総長の就任を阻止しようということを、時の内閣が行うことが可能となってしまう。権力のチェックの仕組みに、決定的な穴が開くことになってしまうのだ。

 さらに許せないことは、このような権力構造に大きな変化を与える法案を、一般の国家公務員の定年年齢の引き上げ法案と抱き合わせて審議、採決を行おうとしていることだ。ビジネスの世界でも、欲しいものと要らないものを抱き合わせて売りつける「抱き合わせ販売」は、独占禁止法で違法になりうるものである。

 法案の抱き合わせ販売、つまり複数の法案の「束ね法」では、一方の法案に賛成でもう一方の法案に反対ということができず、どんなにおかしな法案が含まれていても一括して賛成・反対ということしかできない。(今国会に提出されている法案でも同様の事例が他にある。)審議される委員会は、司法制度を担う法務委員会ではなく、国家公務員制度を担う内閣員会であり、法務大臣は原則として答弁には立たない。

 安倍政権は、後ろめたい法案、きちんとした審議に耐えられない法案だからこそ、このような国権の最高機関たる立法府での正々堂々たる審議から逃げ、国民が新型コロナウイルス対策ばかりに目がいくこのタイミングでこっそりと審議を進めようとしてるのだ。

 今日も衆参の予算委員会では、新型コロナウイルス対策の議論が行われているが、喫緊の課題の陰でこのような姑息なやり方で、歴史に残る重大な権力構造の変更が行われようとしていることは、許すわけにはいかない。