○毎週火曜日の日本農業新聞に掲載される、荒川元農水省官房長のコラムを読むのが大好きだ。
今週の話題は「生乳需給と指定団体」。
【酪農は、単に生乳を供給するだけでなく、資源に乏しいわが国で植物からタンパク質を産み出す持続可能な産業であり、国土保全上も重要な作目だ。他方、牛の生理現象を相手にする以上、搾乳量や乳質が人間の都合で自由になるわけではない。だからこそ、酪農の再生産と乳業の健全な発展は、独り酪農・乳業という民間部門の問題にとどまらず、公的な政策対応の対象となっているのだ】
ところが安倍政権は、指定団体を通じて全量を販売委託する指定団体制度を競争阻害的であるとして、「改革」してしまった。机上の単純な競争政策の観点からはそうなるのだろうが、実際には需給の調整や乳質の維持に協力的ではないフリーライダーが得をするだけの不公平な制度になった。
【協同組合原則に基づく優れた制度に岩盤ドリルで穴があけられたことは誠に残念だ。農水省も「いいとこどり」を排除するための事例集を示すなどようやく運用改善の兆しも見られるが、そんな心配のない制度に立ち返ることこそ必要だ】
こうした正統的な農政論を論じるエース級の官僚を、安倍政権は「改革」に協力的でない守旧派として退官に追い込み、科学的・論理的根拠のない自称「改革」の提灯を掲げるおべんちゃら官僚を重用してきた。
先日、キャリア官僚への東大生の志望が過去最低であるとの報道がなされたが、道理の通らない職場では、若者がキャリアを積める仕事とは思われないであろう。昨日安倍政権は、連続在任日数が歴代最長となったが、この8年間の政権運営で日本の政府にとってとてつもないものが失われてしまったことにも、目を向けなければならない。