〇この方の主張には肯けないことも多いが、このインタビューには共感するところもある。
【今は政府がほとんどの法律を提出しているので、国会議員が単なる「法案の承認者」に成り下がっています・・・
一方で、実質的に立法を担っている官僚の組織自体が、危機的状況にあります。昔ほど、政府に参加してほしいような優秀な人材が官僚になろうとしない。国会の立法能力は低いままで、立法を自主的に担う官僚組織のレベルも下がる。ということは、日本全体で立法能力が向上しないということです。
制度というものは何十年も経てば腐食、風化します。だから、法律で作ったものは法律で直していかなければならない。その作業は本来、政治家の仕事です。国民に選ばれて、人々の声を聞いて、それを政策に反映するのが国会議員の仕事なのですから。国会議員の立法能力が現在のように低いままだと、日本の社会全体が停滞し、必要な改革ができなくなってしまうのではないでしょうか】
ちょっとわかりづらいかもしれないが、このことこそが私が政治の道に進んだ最大の理由だ。日本では歴史上一度も、国民の意を受けて、国民に委任された者が、法律や制度、つまり社会の決まり事を作る本物の民主政治が行われたことはない。国民によって選ばれていない、たとえば官僚が、本来の政治家以上の仕事をできればいいが、その保証は全くないし、現実にそうなっていない。国民の中に入って行って、国民と共に世の中を動かしたい、というのが私が政治を志した原点だ。
【政府に民間からいい人材を連れてくるためには、シンガポールのように高い給料が必要です。そうすれば優秀な人材が来るし、そういう優秀な人たちが高給をもらえば汚職なんかしない・・・
本当に民間の優秀な人を入れようと思ったら、驚愕するような報酬額になるはずです。私も実際に辞めて分かりましたが、あんな役人の給料ではやっていけない、アホらしくて。本当に能力のある人は、今の次官や局長の給料では絶対来てくれないですよ】
私は、お金や生活のために官僚をやっていたわけじゃないので薄給は気にならなかったが、自宅に「あなたの本当の給料は今の3倍です」というヘッドハンティング会社からの手紙が来たり、大学の同級生などと年収の話をしていると、さすがに気が滅入る時もあった。
誰かが国民のために法律を作ったり、予算を配分したりという仕事をしなければならないし、どういう制度を作るのか自体がその国の競争力を決め、その国の豊かさや国民の幸せを生む。優秀な人材を年俸1億、2億払って公務員にするのでなければ、結局国民が自らの思いを受け止めてくれる能力のある人材を選挙で選ばなければ、まともな法律や制度などできようがないのだ。
確かに国会議員の約2,000万円の給料は高いが、本来国会議員の仕事は民間で2,000万円をもらっている人の仕事より、はるかに高度で価値のあるものでなければならないはずだ。一方、私のように20年近く不安定な生活な中で、不条理なことも多い選挙を中心とする政治活動を続けることは、民間や霞が関でバリバリと働いている人には勧められないし、大部分の人は耐えられないだろう。
ぜひ皆さんにも、「政治家に何かをやってもらおう」という間違えた期待や、「日本の政治家には期待できない」というニヒリズムや、「そうは言ってもどこかの偉い人がちゃんとやってくれているんでしょ」と他人事になるのではなくて、どうやったら同じ日本人の中から、この国を運営することを託し得る人を自分たちの力で出していけるのかと、統治の主体側に立っていただきたいのです。
私は、そうした皆さんの評価の対象となるために、今しばらくの間チャレンジを続けてまいります。
さすが冨山さん。ようやく本質を突いた官僚論が出てきた。
【民主的な政治システムは極めて未成熟で、選挙で選ばれた政治家はロクでもない、というエリート超然論が見え隠れする】
国民が自ら選らず政治家を「ロクでもない」と言っている限り、何も変わらない。官僚制改革と政治改革はワンセットであり、統治システムそのものを変えるのは、日本が明治維新でも敗戦後も、やったふりで置き去りにされた、真の民主政治を実現することと同義だ。