〇この音声、河野大臣にどやされている経産官僚は、私の高校の先輩だ。スジを曲げない水戸っぽの国士だ。
この音声が示すことには、エネルギー政策上の問題とか、官僚へのパワハラという以上に別の本質的な問題がある。法治国家で議院内閣制の日本では、政府と大臣の権限は厳密に法律によって与えられている。大臣が指揮監督できる行政組織の範囲は法律に基づいており、河野大臣は経済産業省の官僚への指揮監督権はない。
内閣法によって「内閣が職権を行うのは、閣議によるものとする」とされていることから、内閣としての政策の一体性を保つためには閣僚同士の調整が必要となる。内閣府の大臣たる河野大臣が行うべきは、自らの権限外の役人をしばくことではなく、梶山経済産業大臣との政治家同士の調整だ。いくら権限外の大臣が、役人を怒鳴りつけたところで、何かが動いたり決まったりすることはない。むしろ混乱が生じるだけだ。
かつて、私が構造改革特区制度を担当していた時、文科省に関連する規制改革に官僚同士の折衝では役所が応じなかった。すると、鴻池構造改革特区担当大臣は当時の遠山文科大臣の部屋まで乗り込んでいった。補佐役に私が大臣室に入ろうとすると、「これは大臣同士の話だ。お前たちは来るな。文科省の秘書官も部屋を出ろ!」と怒鳴りつけて、サシで話をつけてきたことがあった。これが、真の政治主導だ。
河野大臣がやっていることは、評判の悪い野党の「省庁ヒアリング」と同じだ。法律に基づかずに権力を行使しようとするのは、政治主導を履き違えた民主党政権の失敗と全く同じだ。選挙の間近になってあわてて表紙を変えようとしたり、若手が小学校の学級会のような動きをしたり、最近の自民党政権は「悪夢の民主党政権」(安倍前首相談)に似てきているように思う。