福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

入国管理法改正法案について

〇昨日、入国管理法改正法案について、与党の自民党・公明党の国会対策委員長と、私たち有志の会と日本維新の会、国民民主党の国会対策委員長で会談を行い、修正案を採決することで合意いたしました。私は、有志の会の国会担当として出席いたしました。

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 これまでの日本の難民認定制度は、国際的な人権基準から見て厳しすぎるのは大きな問題だと考えます。一方、不法滞在の外国人による犯罪も増加しており、人権の擁護と悪意による不法行為を防ぐことの両立を図らなければなりません。

 これまでの制度では、難民認定手続き中は送還(国外退去)することができない仕組みだったため、退去したくない外国人は実際の難民かどうかに関わらず難民認定手続きを取って、入管施設への収容が長期化したり、仮方面許可を受けた者がそのまま逃亡したりする事例(令和3年で599人)が増えてきました。10年前は年間1,500人程度だった難民申請者数が近年では1万人を超えていて、本当の難民が誰なのかを判断することも難しくなっています。

 そのため、今回の改正法案では、3回目以降の難民申請者や3年以上の実刑前科者、テロリスト等は送還できるようにしたのです。私は入口段階で条件を付けて徒な難民認定申請を抑制しようとする制度については私は理解するのでが、この点を一部の野党の皆さんが厳しく批判しております。条文には例外規定もあり、「難民の認定・・・を行うべき相当の理由がある資料を提出した者を除く」とされていて、こうした場合には送還は停止されます。

 私は、どうやったら適切な難民の認定ができるのかというのは、難しい問題だと考えます。反対する野党は、第三者機関が認定すれば問題は解決するとしていますが、第三者機関というのは政治のガバナンスが効かない機関であり、これまでの日本の場合お役所以上のお堅いお役所になりがちでした。今の入管庁がダメだから別の組織で、というほど単純な問題ではありません。

 一方、説明に来た法務省の官僚は、「トルコではクルド人の大臣が出ているから、トルコのクルド人は国内で差別を受けていない」など、国際的にはおよそ認められない恥ずかしい説明をしています。こうした現状の役所による認定では、難民の人権擁護などはできないとも実感いたします。

 私は、結局は入管庁の運用をきちんと政府に入った政治家がチェックをするしかないのだと考えます。民主党政権時にも、法務省は難民の認定に関する運用を変えることはできませんでした。ぜひ反対する野党の皆さんには、それが何故なのかをお考えいただきたい。国民に選んでいただいた自分たちじゃなく、第三者の方がなぜ運用がうまくいくのか、合理的な説明はできないのではないでしょうか。今回の修正案では、難民認定申請をした外国人に対する配慮義務や難民調査官の能力の向上などの規定が加えられましたが、これだけでは実効性は担保されていません。ただ運用に当たっての指針になるという意味では、一歩前進でしょう。

 一方、法案の修正協議に加わっていた立憲民主党は、修正案に不満だとして反対することを決定いたしました。与党は、附則で難民認定についての第三者機関の設置を検討する条文を示したことには、私は正直驚きました。ここまで大胆に降りるのか、と。対する立憲民主党は、附則ではダメだなどと言っていますが、立憲民主党が示す案が政府案以上に制度として実効性があるものとは思えません。先にも言った通り、第三者機関だから運用がうまくなされる保証も、何もありません。本則にするには、法案としても詰まっていない未熟なものなのです。

 附則では、実現性が担保されていないという反対理由も理解できません。かつて民主党の野田政権は、自民党の麻生政権時の所得税法改正法案の附則104条に「段階的に消費税を含む税制の抜本改革を実現するため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講じる」とされていることを根拠に、消費税増税を決定しました。民意によって政権が代わっても、自らは附則を忠実に実現しているのですから、たとえ野党であったとしても附則の履行を求め続ければいいだけです。私の経験では、附則の検討条項は、それなりに実効性があってこの条項を下に改正された制度は結構あります。

 ここまで修正協議で実利を取りながら反対をするというのは、「反対のための反対」としか言いようがありません。一部の極端な人は反対する勇ましい姿勢を評価してくれるのでしょう。しかし、立法府たる国会議員の役割は、一部の支援者の気持ちを満足させることではなく、よりよい制度を実現するための法律の条文を決めることです。私たち有志の会は、現在よりは改善されるこの法案には、賛成いたします。

 今回の修正案を作り上げる過程で、国会とは何か、政党とは何か、与党・野党の役割とは何か、ということが浮き彫りになったと考えます。政権を担って、政府に入って法律を執行・運用する立場を目指すのであれば、野党であってもそれにふさわしいふるまいをすべきであると考えます。