福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

ロンドン3日目

〇ロシア上空を避けるため、ロンドンから北極周辺、グリーンランド、アラスカを経由し、13時間以上かけて日本に戻ってまいりました。ロンドン3日目の最終日も、空港へ出発直前までヒアリングや意見交換。

 その前に、朝の散歩は地下鉄と水上バスを乗り継いで、公共交通の事情調査。ロンドンの地下鉄は、最低運賃が6.7ポンド、約1,200円と高額です。パスモと同様のオイスターカードを使うと2.7ユーロ、約500円にまで割引されますが、それでも高額。多くの人が自転車通勤です。そのため、テムズ川の水上バスに自転車を載せて通勤している人もいます。なんだか優雅ですね。

 この日は、まず公務倫理基準委員会(CSPL:Committee on Standards in Public Life)のジリアン・ピール委員と意見交換。ピール氏は、オックスフォード大学の政治学者。CSPLがあるのは、英国財務省の歴史的な建物。第二次大戦中は、チャーチルが寝泊まりしながら指揮をしていた場所です。

 前日ヒアリングをした選挙委員会(EC)は、法律に基づいて設置されている行政府から独立した下院議長の下にある院内統制のための組織であるのに対して、CSPLは、1994年にロビイングのお金をもらって便宜を図る質問をしていたスキャンダルをきっかけに、メージャー首相が作った法律に基づかない独立諮問機関。内閣府の下に置かれています。

 私からは、ECとはどのような役割分担になっているのか問いました。ECは議会の組織なので与野党の合意がなければ動かすことができないため新しいことを進めるのが難しいが、CSPLは規制当局ではない独立諮問機関なので専門的見地から自由に提言できる。ただし、強制力はないため、これまでの保守党政権では軽んじられてきたと言います。議会の権威と自律性が高い英国で、行政の側から政治倫理に関することを提言しても、あまり受け入れられることはないのではないかと正直感じました。

 午後には日本大使館で、マーク・ローガン前下院議員と意見交換。ローガン議員は、前回の選挙でイングランド北部の選挙区で保守党の議員として初当選しましたが、保守党の政策より労働党の政策の方が自分の政治理念と合っているとして労働党へ移籍し、7月の総選挙では出馬しませんでした。保守党から移籍した議員はこの1年で4人もいるそうですが、極右ポピュリスト政党が進展する中で保守党がさら右に寄るのを嫌って離れるローガン氏のような場合と、極右ポピュリスト政党の改革党に移る議員と両方の場合があるようです。前日の保守党のクラーク氏もそうでしたが、政権交代を通じて政党間の妥協によって中道が保たれる英国政治は、こうした政治家のバランス感覚によって成り立っているのです。

 オックスフォード大学で中国研究をしていたローガン氏は、外交官出身。中国語を操りますが、今は日本語を勉強中。この秋には早稲田大学に日本語を学びに来るというので、再会して東アジア情勢などについて意見交換したいと思います。まだ40歳で、いずれは労働党議員として国会に戻りたいということなので、いい関係を築ければと思っております。

 若手政治家のローガン氏とは、政治とお金のことなどをフランクにお話ししました。英国も、ドイツも、議員報酬は日本と同水準。政治活動にかかる経費も、全部公費の範囲内です。交通費は、タクシー代なども含めて全額支給。ロンドンでの住居費も、スタッフの給料も、ロンドンと地元の事務所経費も、すべて支給されます。それを審査するのが、議会にある独立機関のIPSA(Independent Parliamentary Standards Authority)。ここで、その経費を公費で出せるのかをシステマティックに判断するのですが、官僚的で決定が遅いので大変だとローガン氏はぼやいていました。公費が支給された支出は四半期ごとに公表され、変な支出をするとすぐにメディアに報道されるので、それが政治家の政治資金の適正化につながっていると言います。

 こうした制度の下では、自分で政治資金パーティーを開いて資金を集めるなんてことは、ほとんどの議員はやらないと言います。選挙期間でも使えるお金は200万ポンド(約380万円)だけですから、私財を投じたり、自分の給料を政治活動に充てるなんてことはありません。4回落選をしている私は50歳を過ぎても資産はゼロで、ずっと政治資金集めに塗炭の苦労をしてきましたが、英国では「人生を賭けて」とか「井戸屛政治家」なんてことは無縁のようです。そんな仕事をしようとうするのは、能力のある人というよりは変態ですから、まともな政治にしようとするならこれが普通なんでしょう。

 欧州の政治の現場に来て話を聞くと、民主政治とは何なのかという本質的なことを体感することができます。それぞれの国の制度は異なり、その制度の違いはそれぞれの国の歩んできた歴史や文化に基づくものですが、権力を国民自らが作り制御していく代理人として政治家がいるという本質は変わりません。そこには社会全体に自治や自律の精神があるのです。「お任せ民主政治」ではありません。

 今回の政治改革特別委員会の調査は、石田真敏委員長の下きわめてストイックで実務的なものでした。朝の散歩以外は、観光の要素はゼロ。同行してくれた衆議院調査局の山岸雅広次席調査員や総務省の長岡丈道政党助成室長も、ハードワークをしてくれました。在独、在英大使館の同期をはじめとする外交官の皆さんも、要人との面談日程確保など最大限の努力をしてくれました。与野党呉越同舟での洋行でしたが、1週間行動を共にして、石田委員長をはじめそれぞれのメンバーの政治改革にかける思いも再確認できました。国民の税金を使い、関係者の皆さんにお世話になって得たこの成果を、日本の民主政治の成熟のために生かしてまいります。