福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

米国の世界における役割は決定的に変わった

www.asahi.com

〇昨日未明のトランプ米国大統領らとゼレンスキー・ウクライナ大統領の口論は、衝撃的だった。世界中からの衆人環視の中で、米国のリーダーたちが感情を露わにしたこの会談は、世界史に残るものとなるだろう。

 この対談は、表面的にはウクライナを巡る米国、ロシア、ウクライナの間の駆け引きはの一端であるが、もっと大きな構図で見なければならないだろう。一つは、米国の世界における役割が決定的に変わったことを確定したことだ。

 第二次世界大戦後の世界は、パックス・アメリカーナと言われるように、冷戦期は米ソ二大国の頭目として米国は西側社会の結束の要となり、核の傘を背景に軍事・経済上のヘゲモニーを握っていた。冷戦終結後も、世界の基軸通貨たるドルと圧倒的軍事力を背景に、グローバリズム(全球化)の牽引役となった。

 しかし、ヒト・モノ・カネが自由に行き交う国境の壁が低くなったグローバリズムの世界では、「自由の国」アメリカより、国民の自由を抑圧しながら、巨大な市場や豊富な資源を背景にグローバルな経済的利益を獲得しようとする中国やロシアのような権威主義国の方が、効率的に富を蓄積できるようになった。米国が生んだグローバリズムが、かえって米国の首を絞め、ロシアやグローバル・サウスと言われるモンスターを生んだのだ。

 世界の絶対的リーダーから相対的リーダーに転落した米国は、ロシアや中国と対等な立場でのディール(交渉)によって対峙しなけれならなくなったのだ。これは決してトランプという大統領の特殊性によるものではなく、米国の没落に伴う必然なのだ。

 さて、日本はどうなるのか。トランプ大統領とゼレンスキー大統領の口論からわかるように、米国は今後自らの国を自らで守れない者に、その国を守るための支援はしない。両国の力関係を確定するためのディールに、手を貸すだけだ。そして、そのディールそのものに値段をつけ、米国に支援を求める国とディールをする。あたかも、賠償請求に関わる弁護士のように。

 30年前と違い、日本と中国との力関係は、残念ながら中国が圧倒している。日本が米国に依存しようとすれば、その日中間の力の差を固定化するディールに米国は関わるだけだろう。先ほどの例に例えれば、弁護士を介して相手に賠償請求をしたところ、減額した額で交渉し、高額な弁護士報酬をふんだくる、というものだ。台湾海峡の問題でも、同様だ。だがそれは、日本にとって決して幸せなことではない。

 戦後80年の今年、日本はあらゆる戦後秩序を脱ぎ捨て、真の国家としての自立を真剣に考えなければならない時がやってきたのだ。安倍首相がその意味も分からず唱えていた、真の「戦後レジームからの脱却」だ。政治体制も経済の仕組みも、根本から変わらざるを得ない時に突入したのだ。

 そして、もう一つ今回の会談やロシアとウクライナの戦争をめぐる今回の欧米諸国の狼狽した行動が示したことは、文明の転換点だ。すなわち世界史的にも、、プロテスタンティズムによる宗教革命に始まり、産業革命、そしてイギリス名誉革命やフランス革命やアメリカ独立革命を経て構築してきた、西欧近代文明の崩壊という大きな歴史のうねりが来ていることを表している。

 今の西欧近代国家を乗り越えそうな権威主義国を眺めていると、それは再び力による支配と権威による上からの秩序の世界になるようにも思われるが、私はそうではない新たな文明が、西欧近代文明の中から生まれてくるのではないかと希望的な観測をしている。そして、それができるのは、東洋の国でありながら西洋近代文明を最大限に吸収して、少し前には世界のトップランナーとなった日本なのではないかと思っている。

 このような時代の日本に生きる政治家として、感性を研ぎ澄まし、柔軟に知識を受容しながら、今何をすべきなのか考え、行動してまいりたい。