福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

マンションの管理・再生の円滑化等ための区分所有法等改正法案

〇懸案のマンションの管理・再生の円滑化等ための区分所有法等改正法案の質疑に立ち、その後採決が行われました。この法案の大部分には賛成なのですが、マンションの所有者が移転した時でも元の区分所有者に損害賠償請求権が残ることを法文上明確にする条文は、さまざまな取り返しのつかない問題を生む可能性があるため反対し、反対討論に立ちました。質疑と反対討論の模様は、YouTubeでご覧ください。


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 法務省や民法学者は、損害賠償請求権はマンションの分譲者と購入者の売買契約に伴って発生するのだから、最初の購入者に存在するのだと言います。法理論上は、そうなのでしょう。でもそうすれば、そのマンションが転売され新たに購入したマンション所有者は損害賠償請求権がなくなり、仮に住んでいる間に欠陥が見つかっても賠償金は今住んでいない最初の購入者に渡ってしまいます。

 法務省や民法学者は、極めて限られた事例を出して旧区分所有者の財産権を守ることが必要だと強弁しますが、常識的に考えてそんなことは屁理屈であって、本来守られなければならない人は欠陥が見つかったマンションの今住んでいる人です。これまでは損害賠償請求権が誰に存在するかは法律上は明確ではなかったので、それを巡る訴訟は起きてきませんでした。今後旧区分所有者が損害賠償請求権を持っていることが明確になれば、それを主張したトラブルが多く出ることでしょう。私たち立法府の役割は何なのか、という観点から議論を行いました。

 中野国交大臣は安定の官僚答弁の朗読。法務省民事局長は現実性に乏しい法理論を繰り返すだけ。立憲民主党は修正案を出してきましたが、逆におかしなことを確定させて後戻りできなくしてしまうような「余計なお世話」の条文。こんな立憲民主党の修正案が可決したからといって、法案全体に賛成することは理解できません。そうした思いを込めた反対討論の原稿は、下記のとおりです。

 

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 有志の会の福島のぶゆきです。ただいま採決に付されようとしている法案について反対の立場から討論を行います。

 老朽化マンション等の管理や再生を円滑にするために本法案で定めている多くの事項は、喫緊の課題を解決するために有効なものとして基本的には賛成です。しかし、共用部分に係る損害賠償請求権の行使の円滑化については問題が多く、一度今回のように改正してしまえば以後の法改正では対応できない深刻な問題であるため、反対せざるをえません。当初法務省・国土交通省とマンション問題に取り組む弁護士グループの双方から話を聞き、この間GW中も条文や審議会の議事録を読み込んで私なりに考えてきましたが、先日の参考人質疑での議論を受けて、反対すべき法案であることが腹にすっと落ちたのです。

 まず立法過程に大きな問題があります。法制審議会区分所有法制部会は、さまざまな立場の人がメンバーに入っているにもかかわらず、民法学者と実務家弁護士との対立のまま進みました。難しい法理論を駆使していますが、そこに「いまマンションに住んでいる人の権利をどう守るか」というマンション政策から議論はほとんどなされませんでした。そして、政府の審議会では異例の佐久間部会長自身が長広舌をふるい自説を強引に押し付ける姿が見えました。こうした異常なプロセスで作られた法案だからこそ、大きな反対の声が上がっているのです。

 今日、賛成の起立をしようとしている委員諸君に訴えたいと思います。私たち立法府の役割は何なのか。それは、正しい法理論を追求することではありません。論理上存在する権利を守ることでもありません。選挙で国民の負託を受けている私たちの役割は、本当に困っている人、幸せに生きるための権利を侵害されている人を守るために、憲法の下での実際に生きる法律を作ることです。今回の法改正で、今住んでもいない旧区分所有者の損害賠償請求権を守ることがそこまで大事ですか?投資目的で購入する外国人が増えたりマンションを巡る環境が根本的に変わる中で、学者では想定しえないような利益を追求した行動がでてくることも容易に予想されます。先日の参考人が指摘したような現場の実務からの問題点には説得力があると思いませんでしたか?

 今回、これまで法律上はあいまいであったため大きな問題とはならなかったことが、この法案で旧区分所有者に損害賠償請求権があることを明記したことで明らかとなり、修正が効かなくなってしまいます。にもかかわらず、検討事項の修正案を出してそれを実現したことをもって賛成する政党は、その法律上の害悪がわからずにやっているのだとすれば法律を理解できていない、わかってやっているのだとすれば「反対者に理解したふり」の詐欺的なまさに「野党しぐさ」です。本文を修正しなければ、何の意味もありません。

 与党は政府案に黙って賛成、野党は害悪のある条文であっても修正を勝ち取れば賛成という国会の論理ではなく、政治家として国民のために何が必要なのかという価値判断を行い、国民のための法律にするなら政府案を修正することに躊躇しない姿勢を求めて、反対討論といたします。