〇5年前の2021年7月3日、静岡県熱海市で盛土が崩落して土石流が発生し、住宅64棟が全半壊し28人が亡くなった。これを受けて2022年の通常国会で盛土規制法が制定されて、一定規模以上の盛土・切土に対する新たな規制が導入された。


私は、国土交通委員会のメンバーとして現地に視察に赴き、この法案審議にも条文ベースで精力的な議論を行ってきた。最近社会派の良質な記事を連発している読売新聞が、6月30日の紙面の1面肩と3面ほぼ全面を使った綿密な取材に基づく記事で、この法律には抜け穴や不十分な点がいくつかあることを指摘している。それらは当時の法案審議でも指摘されていた点だった。
2022年4月13日の国土交通委員会で私は、
【今議論したように、やはり、まだいろいろ法律には穴があるし、条文の不備もあることが分かったと思います。特に、これまでさんざん議論がされてきたトレーサビリティの話などは、この法案の中にはどこも触れられておりません】
と指摘している。盛土の問題の一番のコアは、建設現場から出される残土がその後どこにどのように行っているのかが、法律上把握できる状態にないことにある。建設残土がいくつもの業者を経て最終的に悪質な業者によって不法に投棄されても、それを行政は追うことができない。

元請けのゼネコンなどはそうしたグレーな部分に触れられたくないので、この問題をある意味アンタッチャブルな問題にしてきた。そうした意を受けて、ゼネコンが作ったかのような質問をする与党議員もいた(今某省の大臣になっている)。当時日本維新の会にいた足立康史議員は、建設残土トレーサビリティ法案を提出したが可決には至らず、私も提出者になって盛土規制法の附則に「この法律による改正後の規定について、その施行の状況等を勘案し、盛土等に関する工事、土砂の管理等に係る規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」という規定を盛り込むのがせいぜいだった。
このように、法案の1条1条の規定ぶりは、その後の社会経済に大きな影響を与えるが、最近の自民党議員にそのように法案の条文を大切に審議している議員は見たことがない。法案提出前の与党内の事前審査も、かつてはその分野に精通した族議員が控えていて役所にとって大変緊張するものであったが、最近の再審法改正法案などの例を除いて厳密な審査が行われている形跡はない。与党の皆さんは「野党はスキャンダル追及ばっかり」などと言う前に、自らが立法府たる与党議員としてどれだけ一つ一つの法案や一条一条の条文を大切にしているのか胸に手を当てた方が良い。少なくとも事前審査できない野党の方が、スキャンダル追及以上に法案審議を大切にしている。
私は、この浪人期間を生かして民間人の立場で、コンサルティングの仕事として、建設残土トレーサビリティの法制化に微力ながら携わってまいる所存だ。