福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

インド

〇息子と二人で、初めてインドに行ってきました。来年大学受験の息子と海外に行けるのは、今年しかありません。もちろん公費などは使わず、コロナ禍で溜まっていたマイレージを使い、移動は鉄道やリキシャーを乗り継いだ貧乏旅行をしてまいりました。

 三島由紀夫の最期の小説『豊饒の海』の『奔馬』に出てくる、ガンジス川のほとりの聖地バラナシ(ベナレス)にはずっと行きたかったので、インドの熱気と混とんに身をゆだねてきました。

【さるにてもベナレスは、神聖が極まると共に汚穢も極まつた町だつた‥・すべてが浮遊してゐた。といふのは、多くのもつとも露はな、もつとも醜い、人間の肉の実相が、その排泄物、その悪臭、その病菌、その屍毒も共々に、天日のもとにさらされ、並みの現実から蒸発した湯気のやうに、空中を漂つてゐた。ベナレス。それは華麗なほど醜い一枚の絨毯だつた】

 バラナシは、この三島の筆のとおりの場所でした。川のほとりの野立ての火葬場には24時間煌々と遺体を焼く炎が上がり、ガンジスに遺灰を流すのを涙を浮かべて見送る遺族の姿があります。その後ろには、最期の時を迎えるの待つ、人間の様子を辛うじて留めている人たちの宿舎があります。この聖なる川を目指して、インド中から膨大な数の人がやってきて、とてつもない喧騒の中、川の流れに身を浸しています。

 ここでは、聖と俗、清と穢、貴と賤、富と貧、正と邪そして生と死は対立する概念ではなく、すぐ隣にある一緒のものとして存在しているのです。古くてとても清潔とは言えず、建て付けの悪い、しかしガンジス川を一望できる宿で、ガンジス川を眺めながら、親鸞聖人御誕生850年慶讚法要以降なぜか興味を持った親鸞聖人に関連する本を読みました。日本で読むより、躰に入ってくるのではないかと思ったのです。

 来る前は、「下痢するぞ」とか「大変な国だぞ」と脅されてきました。確かに、人の数は膨大で、歩いているだけで次々に物売りやリキシャードライバーに声を掛けられ、嘘か本当かわからない能弁と吹っ掛けてくる交渉に疲れる時もあります。でも、多くは根が優しく、何よりも親日的です。何人もからあいさつ代わりに「日本人はインド人の友達だ」と言われました。安倍=モディの関係はみんなよく知っていて、安倍政権を必ずしも評価していない私ですが、安倍政権がインドとの外交関係で作った資産は絶大なものがあると実感いたしました。

 バラナシはモディ首相の選挙区であり、G20の文化大臣会合が開かれるとあって、街じゅうをモディ首相が描かれたG20の看板が埋めていました。モディ首相になって、地方空港はきれいに整備され、飛行機は遅れることも少なく、まっすぐで快適な高速道路が次々に整備され、評判の悪かった鉄道も複線電化されて日本の在来線より高速の快適な列車がバンバン走るようになったと言います。もしかしたら、インフラ整備はいずれ日本の方が遅れてしまうかもしれません。

 車のクラクションが飛び交う無法地帯の道路などまだまだ途上国そのものの部分もありますが、30年前の中国に比べたらはるかに近代的です。かつて開発経済学を学び、20代の頃は発展途上のアジア諸国を放浪してきた私から見て、「テイク・オフ」直前の状況にあります。息子が社会で活躍する頃には、インドはかなりの国になっていることが容易に想像できます。

 子どもの頃は、東南アジアに連れて行くと「臭い」とか「汚い」と言っていた息子ですが、成長してインドに来てみて、いろいろと感じることがあったようです。毎日のカレーもペロリと平らげ、すっかりインド好きになっていました。大学に入ったら、アルバイトでお金を稼いで、世界各国を貧乏旅行していろいろなものを見てきてほしいと思います。53歳の私は、長時間飛行機の狭い席に座って、乗り物を探してウロウロするような旅は、もう引退したいと思います。