〇衆議院議長公邸で開かれた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」に衆参の全党会派が呼ばれ、有志の会としての意見表明を行ってきました。
有志の会は他党会派に先駆けて3月12日に額賀衆議院議長・海江田副議長に対して意見書を提出しておりますので、それにしたがって下記のような意見を申し述べました。水戸学に関することを最後に発言しております。
今後週1回のペースで議論が行われるので、今国会中にとりまとめる意思があるのでしょう。静謐な環境で、長い歴史と伝統を持つご皇室の先例を最大限尊重してまいりたいとおもいます。
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有志の会の福島のぶゆきです。有志の会は、3月12日にお手元の意見書を額賀衆議院議長・海江田副議長に提出しておりますので、その概要を述べます。
私たち有志の会が何よりも重要だと考えているのは、皇位継承等を議論するに当たっての立法府としての基本姿勢です。立法府の役割は、「皇室はかくあるべき」とか「皇位継承はかくあるべき」という皇室についての「べき論」をすることではなく、将来にわたって安定的に皇位の継承がなされるよう、皇室典範において定めるべき「枠組み」を作ることであると考えます。その上で、私たち立法府は、悠久の日本の歴史の中で直近の民意を受けているに過ぎない存在であることを強く自覚し、悠久の皇室の歴史において先例のないことを可能とする枠組みを作ることには、極めて慎重であるべきだと考えます。私たち立法府の議論は皇室典範を改正して皇室の選択肢を増やすために行うものであり、それぞれの皇族の方の配偶者のあり方などは一義的には皇室においてお決めになり、皇室会議の議に付すものであると考えます。
こうした基本姿勢を踏まえ、政府における検討結果についての意見を述べます。「今上陛下から秋篠宮殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせてはならない」という考え方は、妥当だと考えます。かつての壬申の乱の例を持ち出すまでもなく、皇位継承について世論や議論が沸くようなことは、立法府として絶対に招いてはいけません。
皇族数確保のための方策として、第一に、「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとする」ことは、現在の皇室の御公務を維持していくためにも必要です。皇室典範第12条の改正が必要でしょう。この場合、その配偶者と子は原則として皇族としての身分を有するべきではありません。例外となる場合については、次に述べます。
第二に、「皇族に認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること」は、限定的に認めうると考えます。具体的には、内親王・女王の配偶者となる場合です。皇室典範第9条、第10条の改正が必要でしょう。この場合、養子縁組をされる内親王・女王やその子が皇位継承資格を持つか、その順位がどうなるかについての検討が必要です。皇室典範第1条と第2条の改正も必要となるでしょう。
第三に、「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること」は、憲法との関係など整理すべきさまざまな難しい問題があり、皇統が途絶える危機にある時などの非常時の最終的な方策として、現時点で結論を出すべき事柄ではないと考えます。
以上が、男系で紡がれてきた皇統の先例に基づき、安定的に皇位の継承を行うために可能な方策として私たち有志の会が考えるものです。対象となりうる内親王、女王さまにおかれては、日々人生の歩みを進まれていることから、各党・会派の大部分の合意を得た事項について、皇室典範の具体的な改正案の策定に可及的速やかにとりかかるべきです。額賀衆議院議長と私の故郷である水戸の学者、藤田東湖が作った『正気の歌』では、「天地正大の氣、粹然として神州に鍾(あつま)る」から始まり、「神州、孰(たれ)か君臨す。萬古、天皇を仰ぐ」から、「世に汚隆無くんばあらず。正氣、時に光を放つ」として、日本の歴史上さまざまな困難や大乱があっても、「正気」によって正しく皇統が継がれてきたことが、日本の独立を守り、日本を日本たらしめていたということを謳っています。その「天地正大の気」すなわち「正気」とは、日本の歴史が紡いできたよき先例にすべてあるというのが、徳川光圀公以来明治39年まで約250年にわたって『大日本史』を編纂してきた水戸学の考えです。ご皇室に関わる国会の結論が、この「正気」に基づいて静かな環境の下で出されることを求めまして、有志の会の意見表明といたします。