福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

原発視察は必要だったか

○菅(かん)元総理は、何度も「原発視察に行ってよかった」と自己正当化をしているが、いかなる危機管理の教科書にも「トップリーダーがまず現場に行くべし」などということは書かれていない。

 たとえ結果オーライだったにせよ、なぜ総理である自分に情報が入ってこなかったのか、そこに問題点と解決策を見いだせない限り、やはり「政権担当能力がなかった」と烙印を押されるだけだ。こうしたことを今正しいと思って発言してしまうことが、逆に旧民主系野党に国民が頼ろうとしない根本原因であることに気付いていないことこそが、野党の致命的な問題ではないか。

 さらにこのインタビューで菅氏は、「民間企業である東電には要請しかできず、命令はできない」という趣旨を語っているが、これも間違いだ。原子力災害対策特別措置法第20条第2項では、緊急事態宣言発出後の原子力災害対策本部長たる内閣総理大臣は「原子力事業者に対し、必要な指示をすることができる」とされている。

 立法当時、民間企業たる電力会社に対するこのような権限を設けることについてはさまざまな議論があったが、現行憲法上行使しうる最大限の権限を内閣総理大臣に与えている。「命令できるようにすべき」と思うのであれば、憲法改正も含めた主張をすべきだろう。

 このことは、当時一緒に立法に当たった旧科学技術庁のエースも、首相に直接説明したのだが、「こんなの役に立たないじゃないかっ!」と怒鳴るだけで、聞く耳を持たなかったと聞いている。その官僚は「元々総理大臣に法律で権限が与えられていると説明しても、わかってもらえなかった」と愚痴っていた。

 当時は未曽有の危機の中で大変な思いをされたのだろうが、そうした個人としての感想の前に、必要最低限の危機管理の常識やその時点の法制度とそれによって与えられている自らの権限・役割分担の認識などをなぜ官邸は持ち合わせていなかったのか、災害後もなぜそうしたことを官邸内で共有できなかったのか、そうしたことが問われているのだ。

 詳しくは、日本再建イニシアティブの『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』をご参照ありたい。

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