福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

原子力規制組織と原発再稼働

 まず冒頭、昨日ご逝去されました三笠宮寛仁親王殿下に謹んで哀悼の意を表します。

 橋下大阪市長の「敗北宣言」などによって大飯原発の再稼働に向けたステップが進む中で、私は再稼働に「なお一層慎重に判断することの要請」の署名に加わりました。私は、脱原発の立場に立つにせよ、原発維持の立場に立つにせよ、今の日本の経済構造、エネルギー供給構造が原子力発電の存在を前提としたもので成り立っている以上、大局的にみると世界最先端の安全規制と同等のレベルに照らして安全性が確認された原発については、稼働させざるをえないと考えております。その後原発依存比率をどのようにしていくのかを含む中長期的な我が国のエネルギー構造については、世界の資源賦存状況、中東などの国際政治情勢、我が国の地政学的地位、技術開発の進展状況などを総合的に勘案して、冷静な議論の下で多少の時間をかけて構築していくべきものであると考えております。その中で、原子力についても、バックエンド対策や核燃料サイクルなど「未完の技術」で、安全上のリスクは存在するものの、エネルギー源の一つの選択肢としては簡単に否定すべきではないものであると考えております。

 人間が科学技術の恩恵を受けながら豊かな生活を享受するためには、リスクも存在するということを受け入れなければなりません。このリスクという概念は、それに相応する訳語がないことからもわかるように、日本人が理解するのが苦手とする概念で、一般的には「ハザード=危険の度合い」とそれが起こる確率を掛け合わせたものであると定義されており、「危険性」とも「安全性」とも異なります。危険の度合いが高かったとしても、それを上回る便益があり、かつ社会的にその起こる確率をきわめて低い水準に抑えられるのであれば受容すべきであるし、危険の度合いが低くても、社会的にそれが起こることを予防する蓋然性がないのであれば受け入れない。このように、一人一人の人間や社会の自立した判断が必要となるのが、リスクという概念なのです。絶対的な安全、他者に判断を依存した甘えた安全、というのはありえないのです。

 このように考えてみると、原発再稼働に当たっては、これまでのような絶対安全という安全神話や、原子力村へのお任せ規制から如何に脱却して、社会に新たな安全文化を作ることが必要です。そうした観点から、私も役員を務める党原発事故収束対策PTでは、再稼働に当たって以下の5条件を提示してきました。
1.国会事故調、政府事故調による報告を待つ
2.原子力規制庁法案等の成立
3.改正原子力災害対策特別措置法に基づく新たな地域防災計画の策定
4.免震重要棟のない発電所はその早急な設置
5.ベント菅の設置、放射性物質を除去するためのフィルター設置
 以上について、どれ一つも今回は条件を満たしておりません。党内においても、仙谷座長の元のプロジェクトチームが設置されましたが、まだ2回しか開催されておりません。

 私は、高度に技術的な判断が必要な原子力発電所の再稼働を、その体たらくが世に知らされた原子力安全・保安院に代わる新たな規制組織ではなく、まったくの技術的な素人である総理以下の4大臣が政治的に判断するのは、きわめて野蛮なことであると考えます。私の元同僚たちが暗躍している姿も漏れ伝わってきます。今回のこのような稚拙な、理念も何もない再稼働プロセスを見てみると、官僚組織も劣化しているのではないかと感じてしまいます。3月8日付のブログや6月4日付の茨城新聞1面の記事をはじめとするさまざまなメディアでも発言してきたとおり、JCO事故後の原子力防災体制づくりに中心的に関わり、今回のような事故を招いてしまったことを痛恨に感じている身として、今回の野蛮な再稼働手続きは、将来の原子力行政にとっても大きな禍根を残すものであると考えます。

 そうした意味で、現在国会で審議が行われている新たな原子力規制組織の設置するための法案はきわめて重要です。かねてより、私は党内において、単に原子力安全・保安院経済産業省から環境省に移すだけの政府案ではなく、より独立性・専門性を強めた三条委員会にすべきことを主張してまいりました。官僚に洗脳されてしまった政府に入った与党議員は、そうした私たちの正論をはねつけてきましたが、自民党の塩崎先生たちが中心となって策定された野党案を大幅に受け入れる方向で審議が進んでおり、半ば虚しい気持ちとともに、結果的に正しい方向に進んでいるものと評価もしております。

 一刻も早く専門性・独立性を持った、これまでの原子力ムラの安全意識を転換させるような規制機関が発足し、そこでの世界最先端の科学的知見に基づく安全規制の下で、日本の原子力産業が正常化することを心から望んでおります。あわせて、バックエンド対策や核燃料サイクル政策についても、現実的かつ国益に合致するような方向性となるよう、党内の議論をリードしてまいる所存です。

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