福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

『福島原発事故10年検証委員会 民間事故調最終報告書』

〇東日本大震災から10年。少しずつ、あの被災した日の記憶が自分の中でも薄れつつあるのを実感する。

 しかし、10年経ってますます後悔の念が増すのが、原子力災害への対応だ。先日、未だ災害時のままの現地に行って、その思いを再確認した。私は、1999年のJCO事故の対応に当たり、その後我が国で初めて本格的な原子力防災体制を構築する中心にいた。その事故から10年ちょっと経って、想定外の事象に対応するための実践的な訓練など自分が作った制度が早くも空洞化していて、東日本大震災の時にその経験は十分に生かされなかった。

 国会議員では圧倒的に原子力災害対応の知見が一番あると自任していた私は、地元も大きく被災していてそちらの対応でてんてこ舞いだったのだが、菅(かん)政権の対応に居ても立ってもいられなくなって、官邸に「お手伝いさせてください」と直訴したが、前年の代表選で菅陣営を離れて小沢陣営に行った私を疎んじたのか、返事は返ってこなかった。今になってみれば、あの時押しかけてでも行っていればとも思うが、それこそ後の祭りだ。

 危機が一段落した後、船橋洋一氏が中心となっている「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」に企画段階から助言をし、私の思いを伝えた。

【官邸の政治家らは国の原子力災害対策の基本的枠組み、すなわちオンサイトのアクシデント・マネジメントに関する原子力事業者と国の協力のあり方や、政府内における関係省庁の具体的役割分担について、基礎的な認識を欠いたまま泥縄的な対応に追われていた】

 そして、つい先日船橋さんから『福島原発事故10年検証委員会 民間事故調最終報告書』が送られてきた。

【2020年春以降の新型コロナウイルスに対する安倍晋三政権の取り組みを見ても、福島原発事故の時に露呈した危機管理ならぬそれこそ”管理危機”の経験から何をどこまで学んだのか疑問を感じざるを得ません】

【ことは決して「民主党政権だったから」とか「自民党政権だから」といった次元に収まるものではないのです。民主党のときのフクシマも自民党になってからのコロナウイルスも、危機の評価と管理をめぐるリスク、ガバナンス、リーダーシップのあり方をめぐる根本的な問題では共通しており、まさにそれこそが民間事故調が提起した問いそのものでありました】

 あの原子力災害から10年経って、政府の危機管理体制はほとんど変わっていない。原子力規制委員会はできても、JCO事故以降議論されてきた規制のあり方そのものの転換は行われていない。発電所の防潮堤は高くなっても、シビア・アクシデントに対応するための訓練や装備はほとんど充実していない。「原発維持」「脱原発」の観念的なことは語られても、原子力政策そのものは惰性で続けられているだけだ。

 このままでは、おそらく近いうちにまた同じ大失敗を繰り返すことであろう。それは原子力とは限らない。日本が災禍に見舞われるのは、一義的には天災や他国からの攻撃であったとしても、それらによるダメージではない。リーダーの行動や社会的なシステムの未熟なことによる「人災」が被害を増幅させている。福島第一発電所の事故も、地震や津波といった自然の力による被害は一部だ。施設は、工学的、物理学的な安全性は担保されていた。しかし、想定されうる津波を見て見ぬふりをし、浸水によってダメージを受けうる低地に非常用電源を置くリスクに気付かないという、人間の認知の不全が大きな被害を生むことになったのだ。

 それを克服するのは、「原子力は危険だから止めよう」という、ダチョウが危機に直面して砂に頭を突っ込むようなことではない。問題は特定の科学技術そのものにあるのではないのだ。科学技術を社会で受け容れ、その利益を享受するときに、リスクを低減させるためにどのような制度を構築していくか。科学技術のリスクを認識するために、どのようなコミュニケーションをとっていくか。政治判断に科学的知見をどのように使っていくのか。そうした学問領域や社会的立場、個人の知的能力などの垣根を超えた融合から、社会システムを日本が創造しうるかどうかが問われているのだ。

 私は、どんな立場にあっても、これらのことを追究して人生を過ごすつもりである。

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