福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

茨城県戦没者追悼式

 政局喧しい中、来年度予算の概算要求にむけた農水関係各ワーキングチームの議論や行政刷新会議の仕分けの議論が真っ盛りです。私もいくつかのワーキングチームの座長・事務局長や、仕分け第1ワーキンググループの副座長を務めさせていただいておりますので、日中は会議会議の連続です。その合間をぬっての深夜まで及ぶ政局。「こんなときに政局なんてやってる場合か」という思いもありますが、忙しすぎて目が回りそうな毎日を送っております。

 そうした中、8月は先の大戦を振り返る月間ですので、民主党茨城県連を代表して、茨城県戦没者追悼式で追悼の言葉を述べさせていただきました。暑苦しい政局の話と私の考えは後日ご報告させていただくとして、本日はその追悼の言葉をご紹介させていただきます。

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追悼の辞

 本日ここに茨城県戦没者追悼式が執り行われるにあたり、民主党茨城県選出国会議員を代表し、先の大戦で祖国のために尊い命を捧げられ、わが国の発展の礎となられました五万八千余柱の英霊の御霊に、慎んで哀悼の誠を捧げます。

 心ならずも戦犯として散っていった英霊たちの遺書を収録した『世紀の遺書』という本の中に、昭和二十三年四月十九日異国の地、満州瀋陽で刑死された本県土浦市出身で満鉄社員であられた坂本春吉さんの「最後の航空便」と題する遺書が収められています。しばし、拝読させていただきます。

  維新の志士とは性質は元より異にするも、これも国家の為です。敗戦日本の犠牲、新しい祖国再建の礎石。最後迄無罪を信ずるも万一の場合には総ては神様の思召しと笑って逝けるだけの覚悟はとくに出来ております。御安心下さい。
  御両親様。毎朝お写真を拝し只々御高恩を感謝しております。どうぞ気長に保養して下さい。
  兄さん。春耕多忙の期。私の事は忘れて家業に努めて下さい。健康を害われると申訳ありません。兄さんあればこそ坂本家は万々歳です。私も実に力強いです。
  妻よ。頑張れ。神様に祈りつつ聖旨による生活をなせ。勝司の養育呉々も頼む。心せよ勝司よ。五年生になったね。成績首席と聞いて本当に父は嬉しい。正直なそして正義を守り人の道を踏む良き日本人になる事を父は毎日祈り続けて居る。
  茨城県人七名居った皆無罪夫々釈放となり私一人県人代表の有様となりました。これも何かの意義あらむ。
  最後に神の神恵と憐憫と平安が皆様の上にあらん事を祈ります。

郷土の名誉を背負い、祖国のために粉骨砕身されたにも関わらず、戦犯の汚名を着せられ、遠い異国の地で散華された無念は察するに余りあります。坂本さんには何の罪もありません。この遺書の中には、自らが犠牲となることで、祖国の再建を願い、両親からいただいたご恩に感謝し、家族の平安を願う一人の日本人の尊い思いが込められております。きっと多くの同胞たちが、同じような思いで散華されたに違いありません。

翻って見て今のわが国はどうでしょうか。生きていれば百歳を超えるはずの自らの親の行方が知らずとも一向に構わない日本人が多くいるようです。自ら産み落とした二人の子どもを、遊び歩くのに邪魔だからとマンションの一室に放置して殺してしまった母親のことも大きく報道されました。占領国によって植え付けられた戦後の誤った個人主義の結果なのでしょうか、家族の絆が失われ、共同体としての社会の伝統的価値観が崩壊しようとしております。

戦後英霊のご遺志を引き継ぎ遺された者たちが成し遂げた奇跡的な祖国の再建、経済大国の実現も、長引く景気の低迷や経済競争力の低下の中で危ういものとなっております。こうした苦境を打開するための肝心の政治は、政権交代によって新しい地平を切り開く努力をしながらも、混迷の時にあります。国政に携わる者として、このような祖国の姿を英霊にお見せしなければならないことは誠に慙愧に堪えません。

 でも、この国には大きな希望があります。今年の夏は異常ともいえる暑い夏でしたが、坂本さんも祭られている靖国神社には終戦記念日に大勢の参拝者が列をなして訪れ、英霊の御霊を慰めておりました。その中にはご遺族の方たちに混じって多くの若者たちがおりました。南アフリカで開催されたサッカーのワールドカップにおける日本代表の活躍に見られるように、日本人の若者たちが海外に出て切磋琢磨しております。地域の中でも、NPO法人などに所属して子育て、街づくり、介護や福祉など身近な課題を共同で解決する「新しい公共」の動きが活発になってきております。そして何よりも私たちの故郷には、六十五年前と同じように今日も、見事に耕された緑の大地に筑波山が聳え立ち、太平洋の潮風が松林を吹き抜け、霞ヶ浦には青々と水が湛えられていて、美しく豊かな国土に恵まれております。

 今を生きる私たちが、歴史に謙虚に向き合い、冒頭に拝読させていただいた遺書に示されているような日本人としての伝統的な美徳をとりもどし、政治の正しいリーダーシップが回復されれば、祖国を、故郷を再生できないわけがないのです。昨年の夏に「このままじゃだめだ」という国民の思いが結集して、歴史的な政権交代をなしとげました。私たちは、今を生きる日本人のその思いと、祖国再建を願い散華していかれた英霊の思いを繋げながら、国家興亡の岐路となっている現在を切り拓くために、命を懸けて政治の再生に取り組んでまいりますことをお誓い申し上げます。

最後に、戦後長い間ご苦労を積み重ねながら一家を支え続けこられたご遺族の皆様に、衷心より深く敬を表するとともに、戦没者の御霊の安らかならんことを、そして御遺族の皆様の御健勝をお祈りして、追悼の辞といたします。

平成二十二年八月二十六日

民主党茨城県連副代表
衆議院議員  福島 伸享