〇野党ヒアリングの成果だと色めき立つ向きも多いだろうが、落とし穴に注意したほうがよい。私は、典型的な守旧派官僚だった前川氏の姿を見てきたので、眉に唾を付けてしまう。
まず、宗教法人法第28条では、名称の変更などの「規則の変更」の認証に当たっては、法律の規定に適合し手続きが適正であれば、申請がなされれば認証しなければならないとしている。前川氏はヒアリングで「当時の名称で信者を獲得しており、実態が変わっていないのに変更は認められない」といって拒否したことになっているが、このような理由では「法律の規定に適合」していないとは言えず、拒否できない。
もし拒否したいのであれば、同法第28条第2項に基づいて、宗教法人審議会に諮問しなければならないが、もちろんそのような理由では法令上拒否できないから諮問はしていない。前川氏が、ヒアリングで述べたような理由で当時に規則の変更の認証申請を拒否したのだとすれば、法令に根拠のない行政手続法違反である。本当に、その当時にそんなことをしたのか?していたとしたら、まさにかつての行政指導全盛時代の、「お上意識」丸出しの守旧派官僚の姿そのものだ。
前川氏は下村氏への私怨があるのだろうし、下村氏の背景に怪しいところがあるのは確かだが、上の理由によって名称の変更の認証を法令違反で問うことはできないだろう。前川氏は、ヒアリングで「下村さんの意思が働いていたことは100%間違いないと思う」と発言しているようだが、法律上政治家や官僚の意思ははたらきようがない。これらは、法令の執行を司る元官僚とは思えない発言だ。そもそも名称変更が認められた2015年には、前川氏は文部科学省事務方ナンバー2の文部科学審議官だったのだから、推測ではなく自ら見聞きした事実を具体的に話すべきだろう。
こういうやりとりをしている限り、政府与党の思う壺である。ちょっとマスコミに報道されたからと言って調子に乗ってこの点から突っ込むと、あっさり反論されて何も出てこないだろう。この程度の追及をかわすのは、省庁にとって朝飯前の容易なことである。このように、野党の調査能力や手の内を臨時国会前に明らかにすることになるから、私は民進党時代からこの公開ヒアリングには否定的だったのだ。初回が、前川氏を呼んでのこのテーマであることから、その後の展開はだいたい読めてしまう。読みは、外れて欲しいが。
この問題の本質は、政教分離や宗教団体と政党との関係ではない。宗教法人が関係する団体が霊感商法などの不法行為を行うことに政治家がどのように加担していたのかということと、旧統一教会と岸政権以降の戦後レジームの裏面史そのものだ。後者を本気になって追及することは、極めて困難なことであり、相当の覚悟がなくてはできない。本気で調査しようとしたら、公開でなんかは絶対に出来ない。
「戦後レジームからの脱却」を真に実現するために、こうした本質的な問題に臨時国会で取り組むのであれば、私はそこに加わりたい。でも、物陰から水鉄砲を撃つ程度の覚悟なら、もっと今やらなければならないことがある。
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立憲民主党が勝手に自民党と握ってきた議院運営委員会には、私たちやれいわ新選組のような小会派は委員に入っていない。私たちは、立憲民主党に野党を代表して質問することを委任しているわけでもない。
「国葬」という、国民的な儀式を議論するのに、こうした対応をするのは、自民党も立憲民主党も同じ穴のムジナだと言わざるを得ない。国会で暴れるしかない。