福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

「国葬儀」

〇安倍元首相の葬儀に参列してきた。上京する水戸駅では、何人かの方から「私たちの代わりに参列してくれてありがとうございます」と声をかけられた。

 いろいろ議論のあった「国葬儀」。葬儀場の外では、献花に並ぶ長大な行列と反対する人のデモとが錯綜し、日本の分断が露わになっていることに複雑な思いを持った。私も、なぜ安倍首相が国葬されるのか、実施までのプロセスも含めて納得する点はない。故人を静かに送る環境を作れなかった岸田総理の責任は、重い。

 それでも、葬儀が始まり、遺族代表の昭恵夫人に安倍元首相のご遺骨が抱かれて入場してくると、何度も国会の場で覚悟を持って対峙したあの安倍首相が、落選中の私に電話をいただき温かい言葉をかけてくださったあの安倍さんが、私たちが与党の時にご一緒した勉強会で自信なさそうに話をするあの安倍さんが、一つの小さな箱になってしまっていることを目の当たりにして、もう会うことはかなわないことを改めて実感し、胸の奥底から熱いものが込み上げてきた。心からご冥福をお祈りいたします。

 式自体は、お金をかけた「国葬儀」とは思えないほどパイプ椅子が並んだ質素なしつらえ、所信表明演説のような「国葬儀」に値しないチープな業績の紹介、「国葬儀」という割にはどこにも日本を感じない無国籍で無機質な演出、そして何よりもグダグダな運営が、日本がもはや一流国の座から転落していることを惨めにも実感させるものであった。「エリザベス女王の国葬が」などと比較するのもおこがましい。

 その一方で、菅前首相の感動的な友人代表挨拶。安倍元首相が亡くなる直前に読みかけていた本の中にマーカーが引いてあったという山県有朋の歌を、菅氏自身「私自身の思いをよく詠んだ」と言って二回読み上げた。盟友である伊藤博文の死に当たっての歌だ。

【かたりあひて 尽しヽ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ】

 初代内閣総理大臣の伊藤博文の後に総理大臣を務めた山県有朋は、伊藤博文がハルビン駅頭で暗殺された後、枢密院議長として実質的な権力を掌握する立場となった。精彩を欠く弔辞を読んだ岸田首相に代わって、自ら権力を握る決意を示したものなのかもしれない。

 すでにポスト安倍時代の政治闘争は始まっている。この臨時国会からが、勝負だ。政治に休みはない。この「国葬儀」は、そのスタートなのだ。