〇久しぶりの「新聞は読むものではなく、書くもの」。
明日からの通常国会を前に、読売新聞は特ダネリーク記事を立て続けに1面に打っている。今日は、「首相、キーウ訪問検討」。「岸田首相は……検討に入った」という。毎日読んでいると、岸田首相がものすごい勢いで仕事をしているように見えるが、おそらくそう思う国民は少ないだろう。
一昨日は、「G7首脳、平和資料館へ」。「調整していることが分かった」という。「弾頭交換ミサイル開発」は、政府が「方針を固めた」という。「理工系学部増」も、文部科学省が「方針を固めた」。日米、軍民両用技術を推進は、日米両政府が「乗り出すことがわかった」という。「非正規子育て給付創設」は、政府・与党がその方向で「調整に入った」という。「広島サミット韓国招待」は、日本政府が「検討に入った」。
これらには、主語に具体的な人名はなく、閣議決定などの正式な決定でもない。すべて伝聞によるものだ。「政府」とは一体誰なのか、「検討」とは誰がやっているのか、だれが意思決定して方針を「固めた」のか、固有名詞は一切ない。こういうのが、典型的な政府からのリーク記事だ。おそらく官邸の役人が主導して、読売新聞に書かせているのだろう。読売新聞が、他社に比べて圧倒的な取材力があるわけでもない。
読売新聞も、ただの親切心やジャーナリスト魂で書くのではない。読売新聞グループは、何人もの財務官僚を天下りで受け入れてきた。消費税増税や憲法改正などは、社是でもある。岸田政権の相次ぐ増税検討と、この読売新聞1面の立て続けのリーク記事の掲載は、因果関係があるのではないかと思う。小泉政権や民主党の野田政権、安倍政権などでもたびたび見られてきた現象だ。そうした読売新聞の背後には、何かあるのか、ないのか?
こうしたやり方で政府の大きな方針が動かされていくのは、決して健全な民主制国家ではない。