昨日民主党の税制調査会が開催され、「平成24年度税制改正における重点要望等について」が決定された。報道では自動車取得税・自動車重量税の廃止ばかりが注目されているが、私は農林水産部門会議税制改正ワーキングチーム副座長として、農林水産関係のとりわけ軽油引取税、A重油、山林相続税等の租税特別措置について要望をし、それぞれほぼ要望に沿う形の提言をとりまとめていただいたが、この間そうした個別のことよりももっと本質的なことを訴えてきた。
自民党政権時代は、租税特別措置というのはまさに族議員の腕の見せ所で、数年に一度の見直しのタイミングになると、業界団体と政治家は一体となって運動を行い、成果が上がればその見返りにさまざまな支援を団体から受け、大蔵省はあたかも特定の業界の恩典を与えるような立場から国民からお預かりした税金の減免を差配して権力を維持してきた。これこそ政官業癒着の構造の典型である。私たちは、そのような不健全で不透明な政治を変えるために国会議員になったのではなかったか。その証拠に2009年総選挙での民主党のマニフェストには、「効果の不明なもの、役割を終えた租税特別措置は廃止し、真に必要なものは「特別措置」から「恒久措置」へ切り替える」という記載がされている。
私はこうしたことを踏まえて、
・3年前まで道路特定財源として徴収していたため課税免除となっていたものが、一般財源となったことによってそもそも課税の根拠がなくなった農林漁業用の軽油、船舶・鉄道建設機械等動力用軽油に関する軽油引取税
・エネルギー特会に繰り入れられるものとして徴収しているものの、エネルギーと関係のない利用形態のためそもそも課税根拠のないナフサや原料用炭に関する石油・石炭税
の免税措置については、これを機にマニフェストどおり「恒久措置」とし、仮にまた政権再交代があったとしても族議員が跋扈することのないようにするのが論理上の必然である、と強く訴えてきた。
しかし党の税制調査会は、姑息にも仲間が地元に帰ってしまう金曜日の総会を見計らって座長一任をとりつけ、こうした本質的な租税特別措置の改革に取り組むことを先送りしてしまった。恒久措置にするのではなく、数年に一度の改定にするということは、そのたびに増税の交渉ができるということを意味し、財務省にとっても利益になる。「税こそ政治」という言葉があるように、民主制度の本質は国民からお預かりした税金の使い道を、国民が選んだ政治家が決めることにあると思われるが、政権交代して今回ほど財務省の影響力の下で進められている税制改革の議論を私は知らない。何せ総理自ら所信表明演説で、消費税増税を「歳入改革」とのたまう政権だ。そのほかにも中小企業の設備投資関連税制や研究開発税制についても、この大震災後の不況で民間企業の活力を増進すべき折に、逆にそれらを縮減しようと財務省は企んでいる。党側の重点要望でも「ただし、適用実態を踏まえつつ、課税の公平性を担保する観点からも・・・検討すべき」などというお役所言葉そのものの留意条件を加えて、これに加担しようとしている。昨日の総会に至っては、司会の財務省出身の議員が「党のとりまとめが金曜日に終わっているので、今日は役所側への要望を発言してください」と冒頭発言する始末だ。これでは「租税特別措置の実現は財務官僚様にお願いしてください」と政治家自らが言っているのも同然であり、民主制度の本質を自ら否定していることになるのではないか、と唖然としてしまった。
政権を維持したいがためだけに、自らの能力の不足分を過度に財務省をはじめとする省庁に依存するのは、私たちにとっても政党政治にとっても自殺行為である。週末の大阪の結果を見ても、もはや国民は今の国政に期待することもないかもしれない。もうそろそろ、私たち自らが政権交代をしっかりと総括し、新しい政治の枠組みを作り直すくらいの気持ちで行動しなければならないのかもしれない、と暗澹たる気持ちになった。