昨日の党の常任幹事会で、私に対する党員資格停止2ヶ月の処分の方針が決定いたしました。自分の信念に基づき行動した結果ですので、粛々と受け止めたいと思います。日頃よりご支援いただいている皆様方にご心配をおかけしますことをお詫び申し上げます。
6月26日付けのブログにも示したとおり、今回の騒動で民主党の意思決定プロセスが民主制度の下の近代政党たるに十分なものではないことが明らかになったと考えます。私は、民主党が政権を担いこの国を引っ張っていける政党に生まれ変われるよう、最後の少しの可能性に賭けてしばし仕事をしてみようと思います。
消費増税の問題について、マスコミは小沢グループの動向などの政局ばかりを報道し、三党合意の政策的な内容についてはあまり報道しておりません。今回の増税法案によって、年収500万円子供二人の標準的なご家庭で年に約33万の負担が増える(他の年収でも年およそ1ヶ月の給与手取り分)との試算もある増税ですので、その問題点のいくつかを掻い摘んで指摘してみたいと思います。
(1)「社会保障と税の一体改革」の前提がほぼ崩れた。
当初の政府案でも後期高齢者医療制度の廃止や最低補償年金制度の導入などの具体的制度案が固まっていない現段階での増税には、「増税先行」との強い異論が出されておりました。それをかろうじてピン止めしていたのが、2月17日に閣議決定された社会保障・税一体改革大綱です。政府・与党案では、法律に医療制度や年金制度改革の法案提出時期を決定した同閣議決定を引用することで、増税だけではなく社会保障制度の見直しも同時に行うことを担保していたのです。ところが、三党協議によって作られた社会保障制度改革推進法案では「社会保障・税一体改革大綱その他の既往の方針のみにかかわらず幅広い観点に立って」社会保障制度改革を行うという条文が規定され、このピン止めが外されてしまいました。社会保障制度改革の議論は、社会保障制度改革国民会議なるいわゆる「審議会」で行われます。審議会とは原子力安全委員会に象徴されるように官僚の隠れ蓑となってしまうのがこれまでの通例ですので、官僚組織の勝利といえましょう。
(2)高額所得者の負担増が先送りされた。
消費税は低所得者層ほど負担感の重い「逆進性」のある税制と言われますので、その緩和策が必要となります。そうした意味でも当初の政府・与党案にあった課税所得5,000超の高額所得者の所得税率のアップや資産課税の強化、高所得の年金受給者への国費投入の削減等高額所得者へ負担増は、主に自民党の主張によってことごとく削減、先送りにされてしまいました。
(3)歳入庁の設置は骨抜きにされた。
社会保険と税の徴収を一体化するための歳入庁の設置は、官僚組織に痛みを伴うものの社会保険料や税の未納を防ぐ大きな改革であり、3月の議員間の侃侃諤諤の議論によって「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制について本格的な作業を進める」という条文が新たに加えられました。しかし、三党協議の結果「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施する」と目的から何から見事なまでの「霞ヶ関文学」による骨抜きとされてしまいました。(1)にもあった「幅広い観点から検討」とは、お役所用語で「いろいろ考えてみたけどできませんでした」と言い訳するための常套句です。ここでも財務省の工作は成功しております。
(4)税制改革による税金の使い道は景気対策目的の公共事業に
かつて3%の税率を5%に上げて長期の不況を招きかえって財政の悪化をもたらしてしまった橋本政権の経験などから、景気に配慮した消費増税を行うため、いわゆる「トリガー条項」という条文を議員間の議論で挿入させました。すなわち、名目3%、実質2%を目標とする経済政策を講じ、経済状況の好転を条件として増税を行うことを附則で規定をさせたのです。今回その規定を逆手にとって同附則には、「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」という規定が挿入されました。つまり、消費増税で不況になることが見込まれるけど、不況になれば消費増税分で財源に余裕ができた分を公共事業に配分します、ということを霞ヶ関文学で表現しているのです。これこそこれまで1,000兆円の借金を積み重ねてきた前政権の失敗に懲りていない証拠です。消費増税で経済を冷え込ませた橋本政権の後の小渕政権、森政権は、何度も財政出動を伴う経済対策を打ち続けた結果、橋本政権当時は500兆に満たなかった政府の長期債務を瞬く間に約700兆に膨らませてしまいました。これと同じことをやることが今回の三党合意で規定されているのです。
私はこれらの点を党内の議論で指摘したかったのですが、残念ながらそのようなプロセスはありませんでした。国会議員というものは立法府の人間ですから、作り上げる法律には責任があります。今回の三党協議の結果は、明らかに国民にとっては「後退」してしまっています。法律上の問題点を党内の議論で修正することができないのであれば、残るは参議院の審議を通じて、世論の後押しも受けて修正するしかないでしょう。マスコミもこうした問題点は、ほとんど報道することがありません。税というのは政治の原点でありますから、私は法律の条文を素直に読んでみて、脱藩官僚の政策のプロを自認する身として、今回の行動をとらざるを得なかったのです。決して政局的なものではありません。ぜひ皆さんも、もう一度今回の消費税増税法案の意義や問題点をもう一度お考えいただき、冷静に政治家の行動をご覧になっていただけますと幸いです。長文のブログを読んでいただきありがとうございました。
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