○一部で評判を呼んでいるこのインタビュー記事(有料記事)。菅次期首相の看板政策の「ふるさと納税」に異議を唱えて左遷された、総務省の元幹部の述懐。
前川元文部科学次官と並んで、官僚組織の幹部だった人間が権力者に異を唱える勇気を称える論調が多いが、私が興味を持ったのは下記の記述だ。
「政治主導」を掲げていた民主党政権は、菅政権以降いかに官僚たちにちょろく扱われ、官僚組織や自民党の政権奪回に利用されていたのかという証左である。当時、与党の議員として、別の立場から同じように感じていた。今の政権を支えている与党の政治家も、民主党政権の中枢だった政治家も、「同じ穴のムジナ」ということだ。私には平嶋氏が、「国は政治家じゃなくて俺たちが運営する。そのためには、政治家をうまく利用するのが官僚だ」と言っているのに過ぎないように思う。
時の政権が官僚組織に丸抱えされて政策を実行してきた結果が、今の停滞した日本だ。政策の立案、選択、国民への説明、国民の支持、実行という政官の間の政策プロセスそのものの根本的な転換なくして、大きな時代の転換点にある今の世界で日本は再生できない。
そして、その具体的方策を示し、政権交代でその実現への協力を国民に求めるのが、野党の役割であるはずなのだが、、、私は、それを成し遂げるために、挑戦し続けている。
――霞が関の外に身を置く今、安倍政権をどう総括しますか。
「7年8カ月の長期政権となったのは、直前の民主党政権が中長期的な政策課題について枠組みを作っていた点が大きかったと言えます。安倍政権は、民主党政権に支えられた側面があるのです」――安倍晋三首相が「あの悪夢の……」と連呼してきた民主党政権に、ですか。
「その一例は、民主党政権末期の税・社会保障の一体改革です。野党だった自公両党と2012年に結んだ3党合意は、消費増税に道筋をつけました。当時、私は大臣官房審議官で一体改革を担当し、3党の会合にも出席していました。自民党内は明らかに『消費増税は世間の評判が悪いから、民主党政権にやってもらおう』という空気だったのです。実際、消費増税で民主党は多くの離党者を生み、政権再交代した。もし同じことを自民党がやれば、やはり党が割れるなど混乱したでしょう」――民主党の「遺産」をうまく利用した、ということですか。
「民主党政権の遺産は、アベノミクスの第二の矢である『機動的な財政政策』にも貢献しました。なぜ安倍政権はこれほどの財政拡大路線をとることができたのか。民主党が消費増税の方向性や東日本大震災の復興財源の枠組みを作り、『日本の財政はひどいが、まだ何とかなる』という国際的な信用を得たことが、足がかりの一つになっていたのです」
「TPP(環太平洋経済連携協定)についても、同様のことが言えます。野田佳彦政権はすでに米国との事前協議に入っていました。農業団体を支持基盤とする自民党内には、TPPに反対・慎重な議員が多数いましたが、前政権のお膳立てに助けられました」――新型コロナウイルス対策では後手が目立ちましたが。
「そのコロナ対策でも、緊急事態宣言を可能とする特別措置法、国民への10万円給付に活用されたマイナンバー制度を整備したのは民主党です。官僚支配打破を国民にアピールしていた民主党ですが、人事で意に沿わぬ官僚を飛ばすようなことはほとんどなく、官僚からの問題点の指摘にも比較的耳を傾けていました」