福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

中西宏明氏

〇日立製作所の社長を務めた、前経団連会長の中西宏明氏が亡くなられた。

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 中西氏は、2010年に菅(かん)内閣が突如として交渉を始めようとしたTPPに私が反対論を張って暴れている中、「先輩の息子さんが衆議院議員に当選したのでお祝いに」と大きな胡蝶蘭の鉢を携えて議員会館の私の事務所に現れた。中西氏や中西氏の前の社長の川村氏と私の父は、日立製作所大甕工場で一緒にはたらいていたのだ。社宅が近所のこともあった。

 でも、初当選して1年も経ってからのことなので、私は「お祝い以外の目的があるんじゃないんですか?」と問うと、中西氏は「実はTPPのことで、、、」と本題を切り出してきた。私が、電機産業をめぐる関税の状況や産業構造、TPPで行われるであろう交渉の方向性などを示しながら、「TPPで日立は何か利益になることがあるんですか?」と問うと、「ほとんどありませんね」と正直に答えるのだった。

 「では、なんでいらしたのですか?」と問うと、「経済産業省から頼まれて。経団連のお付き合いですよ」と、これまた正直に答えるのだった。そして、「日立は一度倒産間近まで経営が悪化した中で、国の政策で大きな影響を受けるような経営はやっていない。国に何かを頼るような会社じゃ、世界の競争で生き残れません」とおっしゃるので、何と立派な経営者なのか、日立は必ずや世界の厳しい競争に生き残る数少ない日本企業になるだろう、と確信したのだった。

 その後、2018年に経団連の会長に就任された。日立製作所は元々財界活動にそれほど積極的ではなく、おそらく中西氏も経団連の役割をそれほどは評価はしていなかっただろうから、その就任に当たっては経団連を根本から変えようとする思いもあったのではないかと思う。前回の衆院選の落選直後だったこともあって、そうした志があるなら私は政界から身を退いて中西会長の下ではたらいてみようか、とも密かに思っていた。

 一昨年、拙著『エネルギー政策は国家なり』を書いた時、その冒頭に中西氏が原子力政策をめぐって発言したエピソードを書いた。中西氏や父たちが、半世紀にわたって世界を相手にやってきた仕事に敬意を表したいとも思ったからだ。そして、そのゲラを病床にあった中西氏に送り、本の帯のコメントをいただこうと思ったが、「病気療養中なので」と固辞された。

 最近問題となった東芝などの他の電機メーカーと比べて、日立製作所は経営陣の大なたで復活し、今や数少ない世界で勝負できる企業で居続けている。中西氏が社長に就任した頃に約2,000円だった株価は、今は6,000円を超えている。マーケットも、その経営を評価しているのだ。残りの人生、停滞する日本を象徴する経団連の抜本的改革をやり遂げていただきたかったのに、残念でならない。

 ご冥福を心からお祈りいたします。