福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

いわゆる防衛三文書について

〇通常国会開会後は、公式には総理の施政方針演説、主要政党の党首らによる本会議での代表質問と続きます。私たち5人の有志の会は、ここでの出番はありませんが、予算委員会等での審議に向けて会派として重要課題についてのヒアリングをしたり、私自身が個別の事項について省庁の担当者をお呼びしてヒアリングを行っています。目が回りそうな忙しさです。

 昨日、今日と、国土交通省からはこの国会に提出予定している法案のラインナップについて、総務省からは建設残土の処理方法についての勧告のフォローアップについて、経済産業省からは送電線利用料の新たな料金制度について、ヒアリングを行いました。会派としては、この国会の最大の焦点である、いわゆる防衛三文書(国家防衛戦略、国家安全保障戦略、防衛力整備計画)について内閣官房国家安全保障局、防衛省から説明を受け、これについて議論をいたしました。

①我が国は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面」している。
②「ロシアがウクライナを侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナがロシアによる侵略を抑止するための十分な能力を保有していなかったこと」による。
③「自国を守るためには、力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要であり、相手の能力に着目した防衛力を構築する必要」がある。

というのが、おおまかなストーリーですが、そもそも二点目の議論を政府が正式に閣議決定してことには大いに疑問です。「核兵器を保有するロシアを抑止するためにはウクライナも核兵器を持つべきだった」ということになってしまいます。

 防衛三文書では、「脅威」とは相手国の「能力」と「意思」を掛け合わせたものとしています。一方、その相手国とは誰なのか、その能力や意思をどのように分析しているのかは示されていません。それなくして、どのような装備やどのような能力を持てば抑止力として十分なのか、理解しようがありません。ましてや、それを日本の今の政府の財源を超える範囲でまでやろうとすることの根拠になりません。

 防衛予算を現在のGDPの2%水準にするとも定めていますが、重要なのはGDP比の予算ではなく、予算額そのものです。それを確保するためには、分子を多くして2%するのではなく、分母のGDPそのものを大きくしなければなりません。すなわち、現在の日本の厳しい安全保障環境の根源は、30年間ほとんどGDPが成長しなかった日本と、ものすごい勢いで成長した中国との差によるものなのです。

 どこかの国を仮想の敵とする防衛力の整備は、経済的な成長とトレードオフになる可能性もあります。今回の防衛三文書では、そのような日本の経済成長と防衛力の関係については、何ら分析されておりません。

 これまでになく厳しい安全保障環境の中、精いっぱいの背伸びをしようとしているのでしょうが、私にはかつての大戦を負けた「科学なき国の最期」という宿痾がこの防衛三文書にも如実に現れているように思います。おそらく、このまま防衛予算を増やしていっても、日本の国力を増進させることにはつながらないでしょう。

 私たちは、これからこうしたイデオロギーにとらわれない、本質的な議論をしてまいりたいと思います。この国を衰退を私たちの世代で確実なものとしないために。