福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

霞ヶ関の働き方の問題は、実は日本の政権運営そのものの問題である

〇「野党の質問通告時間が遅い」というのは、霞ヶ関のはたらき方改革の本質ではない。某元首相経験のある野党議員のように、わざと祝日に質問通告を出して官僚たちに休日出勤させるような悪質な議員が一部にはいたが、質問通告が2日前に出されようが前日の19時に出されようが、答弁原稿の作成完了時間は大して変わらないだろう。

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 質問通告が出されると、担当課が割り振られ、だいたい係長クラスや若い課長補佐クラスが答弁案を作成する。数十分もかからない難しくない仕事だ。それを課長や答弁に立つ局長クラス、大臣を補佐する秘書官や大臣官房が順々にチェックをする。この人たちは、だいたい17時過ぎには退庁しているので、自宅や外出先に答弁案を送り、チェックしてもらう。上司が飲み会などに行っている場合は、それが終わるまで回答は来ない。不幸にして小役人の極致の上司の場合は、細かいツメが入って、想定される更問も作らされ、参考資料やデータなども集めさせられる。すべての資料を整えると、各局の筆頭課などから文言の最終チェックがなされ、誤字脱字を指摘されたりする。

 私が霞ヶ関にいた頃と変わらなければ、これが質問通告が出された時の大体の流れだ。予算委員会での総理への質疑になると、これに加えて各府省との協議が加わり、一つの質問に対して同じプロセスを各省がそれぞれに行うことになる。質問通告が早ければそれだけ時間的余裕ができるので、上記の文言チェックはより慎重に行われ、結局答弁原稿が完成する時間は変わることはない。

 問題の本質は、本来国会議員同士が法案の文言や政府の方針について議論をすべき国会の答弁に、なぜここまで霞ヶ関の役人たちが関与しなければならないのか、ということだ。学歴があって政策通を自任し、それでも若干の知的コンプレックスのある野党議員ほど、細かい知識をひけらかすような質問をしやすい。相手の知識を問うようなクイズまがいの質問をして、答えられない答弁者を見下ろすような態度をとる野党議員は、論外だ。私もそうならないように気を付けているが、政治的に練れた答弁者ならそうした問いにまともに取り合わず、うまく「いなし」たり「かわし」たりするものだ。こうした雑魚の野党政治家をいなせないような与党政治家は、そもそも政治家として大臣の資質はない。

 ここまで官僚たちが国会答弁案の作成に頑張るのは、自分たちが国会運営を取り仕切ることで、自分たちが政治に邪魔をされずに国を動かすのだという日本の官僚組織の本能によるものだろう。一方、与党の側から見れば、どんな能力の大臣を政府に送っても、大過なく役割を果たしたことになる安全装置のようなものだ。政府に入った多くの与党政治家は、実際の政権運営には大して携わることはなく、セレモニーでのテープカットや要人との握手の様子を写真にとらせ、地元からの陳情団から要望書を渡されるのを威厳をもって受け取っているだけでいい。多くの国民が信頼を寄せる自民党の政権担当能力などは、その程度のものだ。

 私は、霞ヶ関にいた若い頃、自分たちで法案を作成し、自分たちで与野党の国会の質問を作成し、自分たちでその質問への答弁原稿を書く「劇団ひとり」のような仕事に、馬鹿馬鹿しさを感じるというより、「この国は大丈夫か」という危機感を持って、霞が関を離れて政治の世界に飛び込んだ。今霞が関にいる諸君も、野党を恨むというよりは、無能な政治家にお仕えするのはうんざりという思いの人も多いだろう。なんども報道されるこの霞が関のはたらきかたの問題は、実は日本の政権運営そのものの問題であり、それは長く惰性で続いてきた既存政治を打破することによってしか変えられないのだ。