〇NHKスペシャル「世界は私たちを忘れた~追いつめられるシリア難民~」を見た。衝撃のルポタージュに涙が止まらなくなった。
2011年から始まったシリア内戦から逃れるために、多くの難民が隣国レバノンで暮らしている。しかし、最近の新型コロナウイルスの蔓延や首都ベイルートの爆発事故などでレバノンの経済状況も悪化し、シリア難民は1日数百円で家族が暮らさなければならないほど、困窮の極みにある。
大人は臓器を売り、子どもはゴミ捨て場で1日たったの100円を稼ぐためにはたらき、若い女性は売春をするしかない。精神を病んだ男性たちは家族に暴力をはたらき、絶望した50代の男性が9人の家族を残して焼身自殺する衝撃の映像も流れる。世界中がコロナ禍で大変な中で、こうした生き地獄ともいうべきシリア難民の状況は忘れ去られている。
私の両親は、JICAのシニアボランティアとして2005年から2年間シリアのホムスという街に住んでいた。私も、数週間だけだがシリアで過ごした。旧約聖書に描かれている景観の残る歴史と文化の豊かな国で、人々は穏やかで品があり、食事も美味しい国だった。何よりも親日的で、母がスーク(市場)で買い物するとき「日本人だ」と言うとお金を受け取らないこともあったという。
首都ダマスカスからホムスに向かうバスで隣り合わせた男性の職業を聞いたら、「詩人」だと答えた。祝い事などで詩を吟ずる「詩人」という職業が存在するとのことだった。私にとっては、西欧近代社会とは異なる「夢の国」のようなところだった。両親は、帰国後シリア人女子留学生を実家にホームステイさせ、飼い犬にはアラブと名付けた。
そのシリアが別世界のようになり、シリア人が苦しんでいる姿を見るのは耐えられない。ずっと何かしなければと思って、現職時には議連の活動などもしていたが、今は何もできない。こうして気にかけて、皆さんに伝えることくらいしかできないのがもどかしい。