〇21日までの短い臨時国会では、補正予算案のほかに地方交付税法改正案、NEDO法等改正案の二つの法案だけが内閣から提出されています。今日はその一つのNEDO法等改正案について、私たちの会派5人で経済産業省からヒアリングをしました。
NEDOとは新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称で、民間の研究開発を促進する業務を行う独立行政法人です。今回の法改正は、この法律を改正して、半導体を製造する企業の工場立地に補助金を出すための基金をNEDOに積めるようにするものです。今回の補正予算で計上されている予算額は、約6,000億円! そのうちの約4,000億円が、現在熊本に建設が予定されている台湾のTSMCという世界最大の半導体製造メーカーに交付される方向になっています。
コロナ禍などの影響で世界の半導体の流通が大幅に減り、自動車などの生産が滞っています。日本国内に生産拠点を作るというのは、一見素晴らしい政策のように見えますが、実際にはそうはなりません。TSMCの半導体の売り上げのうち日本向けは元々わずか4~5%。世界中の需要がTSMCに集まる中で、日本は魅力的な売り先ではありません。おそらく日本に新たに作る工場は、日本向けの製品というより、中国や韓国向けの製品を作る工場になるでしょう。TSMCは日本の企業ではなく、日本政府は何ら経営に影響を与えられませんから、「補助金をつけるから日本企業のために半導体を作れ」と言っても思ったようには行動はしません。
経産省の担当課長にこの点を問い質すと、「TSMCはちゃんと配慮しますと言っている」と言いますが、ビジネスの世界で契約書も何もない口頭での発言を元に何らかの決断をすることはありえないでしょう。TSMCが日本に来ることで日本への技術移転が期待できるかといえば、そもそも来る工場は先端製品ではなく汎用製品の工場だし、わざわざ「技術上の情報管理のための体制整備」を補助認定の基準にしていて、日本側に情報が渡らないようになっています。つまり、この法律では、日本のメリットになることが何ら保証されていないのです。
こんな政策に、日本の税金を原資として前代未聞の4,000億円もの政府資金を一外国企業に補助する法改正を、たった1日の審議で通してしまって果たしていいのでしょうか? 今ごろ6,000億円の予算措置をするなら、20年前に同額の予算を日本企業に講じていれば、ここまで日本の半導体産業が衰退することはなかったかもしれません。
4年ぶりに国会に戻ってきて、劣化した官僚組織とそこが作る政策を無批判に通すだけの無能な政治こそが、日本の衰退の一番の根本原因であることを改めて実感します。日本を、生き馬の目を抜く国際競争の「カモ」にしてはいけません。何とかしなくては。