〇水戸市内のある小学校の放課後学級を視察してきました。水戸市は、すべての小学校で民間に委託して放課後学級を低廉な価格で開設しています。そのことは、素晴らしいことだと思います。この小学校では、1,2年生の約半数、2,3年生の約1/3が放課後学級を利用し、1年生から6年生までで250人の児童が利用しています。
現場のお話をお聞きしながら、制度上のさまざまな問題を実感いたしました。そもそも論として、放課後学級が何のためにあるのかというのが、親、学校、行政、受託事業者で認識が共有されていないことがあると思います。この放課後学級は、児童福祉法第6条の3第2項に定める「放課後児童健全育成事業」であり、「保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業」とされています。
つまり、教育や保育の場ではなく「適切な遊び及び生活の場を与え」ることが目的なのです。ところが、学校には適切な空き教室が常にあるとは限らないため、2枚目の写真のようにロッカーの前で教室が空くのを待ち続けなければならないようなことが起きます。私が思うに、児童福祉法はこども家庭庁の所管、学校施設は文部科学省の所管であるため、両者の連携が取れていないのです。昨年の通常国会でこども政策を一元化するという名目でこども家庭庁設置法が成立し、今年の4月1日から同庁が発足しましたが、いかに建前だけで問題の解決に繋がらない組織なのかというのは、こういうところにも表れています。有志の会の緒方議員は、内閣委員会で再三このことを指摘してきました。劣化した国会は、こうしたところにも影響を与えているのです。
放課後学級には、健常なこどもも特別支援学級のこどもも来ますが、放課後児童支援員にはそうしたこどもを扱うための専門性はありません。3枚目の写真のように、特別なケアをしなければならないこどもへの対応は大変です。そもそも支援員には、プロとして生活していけるだけの待遇はないため、皆さんほぼボランティアのような状況です。そうした放課後学級では、こどもたち同士のトラブルは日常茶飯事で、警察沙汰になることすらあるといいます。親たちはお金を出してサービスを受けているという認識の方もいるので、事業者と親とのトラブルも絶えません。
スケジュール表を見ると、部屋の中で宿題をしたりゲームをするだけ。夏休みなども、ほぼ一日ずっと室内での時間です。制度の目的が「適切な遊び及び生活の場を与え」ることですから、そうなってしまいます。野生児だった私の小学生時代なら、ストレスが溜まって我慢ができずに暴れまわっていたことでしょう。このような理念に基づく制度で本当にいいのか、根本的なところから問い直さなければならないのではないか、と思いました。「親が働いていて家にいないから、その間こどもの居場所をつくる」というのは、大人の都合によるものでしかありません。
私のこども時代は、1年生から6年生までがグループになって、野山を駆け巡っていました。当然親たちが管理するようなことはなく、地域の大人たちはちびっこギャングの集団をそっと見守っているだけでした。そこには喧嘩やいじめは日常茶飯事でしたが、上級生が悪事をする下級生をたしなめたり、威張っていだけのガキ大将はのけ者にされたり、こども社会の中なりの自治がありました。ずっと大人たちの目の届く教室の中に閉じこもっていて、ちょっとしたトラブルでも大人から怒られる。大人たちは、親からのクレームを恐れて何も起こらないように対応する。そうした中で育ったこどもたちが、将来の日本社会を構成していくとどうなるのか、私たちはもっと真剣に考えなければならないのだと思いました。
岸田内閣は教育・子育て政策を充実すると言っておりますが、単に経済的な負担を減らすといったことだけではなく、何のための制度なのかという理念や目的から政策体系を作っていかなければならないのだと思います。こうしたことも、これから私は国会で議論してまいる所存です。