〇めったにない、東京での一人の夜。歌舞伎座に錦秋十月大歌舞伎を見に行きました。
私が選挙に出る時、大学の先輩で水戸芸術家のパトロンだった教養豊かな地元の経営者で、昨年残念ながら亡くなった吉田光男吉田石油会長に挨拶に伺った時、「福島君、政治家になるなら、選挙運動だけじゃなく週に1回は美術館に行ったり音楽を聴き行ったりして芸術に触れなさい。週に1冊はちゃんとした本を読みなさい。選挙だけの政治家に、価値はない」と言われました。
20年間選挙で苦労する中、そうした機会をあまり持てないまま、自分の知的パワーがどんどん衰退していくのを実感していました。3期目の今期、なるべくそうした機会を持とうと思っているのですが、やはりなかなか時間を取る勇気が湧きません。
今日は、演目に「水戸黄門」があるので、水戸が地元の国会議員としての「視察」です。初演から48年ぶりの上演。「テレビドラマを歌舞伎にしたもんなんて」とあまり期待していませんでしたが、思いのほか素晴らしい舞台。光圀公が長男頼常を養子として送った高松藩を舞台に、頼常の放漫な藩運営により暗躍する家臣とその犠牲になる廻船問屋を描いています。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で北条時政を演じた大柄の坂東彌十郎の黄門役はうまくはまっていましたが、うどん屋の娘の「おそで」役を演じた彌十郎の息子の新悟や、悪徳廻船問屋の娘の「お光」役の市川男寅ら若手女形の演技が出色。水戸藩と所縁のある高松藩を舞台に、光圀公親子と没落廻船問屋、悪徳廻船問屋の家族の物語が描かれ、光圀公のエピソードは史実も踏まえた重厚なものです。
大団円で、光圀公が側近の悪行に気付かなかった高松藩主常頼に語る「人を信じるのは、難しいものよのう」という言葉は、政治に携わる身にずしりと響きました。政治活動をやっていると、信ずる人に裏切られたり、騙されたりということに往々立ち会います。眠れないくらい悔しい思いをすることも、しばしばです。故吉田光男さんがおっしゃったように、やはり政治家は芸術に触れるべきです。
この素晴らしい舞台も、明後日25日が千穐楽。お時間がある方は、ご覧になることをお勧めします。