霞ヶ浦導水事業は、高度経済成長期に増大する首都圏の水需要を賄うために那珂川-霞ケ浦-利根川を結ぶこの巨大プロジェクトとして構想された。時代が変わり水需要に関する緊急性がなくなっても「霞ケ浦の浄化」と目的を変えて継続しようとしてきたが、約9,000億円の予算の8割を使ってもまだ道のりの半分も完成していない。民主党政権の時に継続するかどうか再検討の場が設置され、私自身毎月のように検討の場を開催するよう要請したものの、国土交通省関東地方整備局はサボタージュを続けてきた。政権が代わってから、急に「幹事会」という名目の行政のみの検討が数回なされたのち、この3月にいきなり「継続」が結論付けられた。
大部の報告書を読んでみたが、乱暴に要約すれば「もう工事を始めちゃっているから、これが一番安くつく」ということだけで、ほとんど科学的な検証がなされていない。那珂川は流れているから澄んでいて一見きれいだが、アオコの養分となる窒素の含有は霞ケ浦の1.6倍。これを流れのない霞ケ浦に持っていっても、希釈効果で水質が浄化するよりむしろアオコにエサを与えるようなもの、という専門家もいる。逆にカワヒバリガイやアメリカオオナマズなどの外来種が多い霞ケ浦の水が那珂川に流入すれば、アユの漁獲量日本一の那珂川の生態系が変わってしまう恐れがある。
これまでの漁協の戦いは、単に「反対、反対」と叫ぶことではなく、一貫して多くの科学者たちの力を借りて理性的に行ってきた。消費税を増税して公共事業費に予算が回せるようになり、政権も変わってうるさい国会議員が落選したからといって、こんな合理性の見出し難い事業をドサクサ紛れに再開するのは許されない。漁業関係者だけではなく、多くの方々をまきこんだ運動をやっていきたい。
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