福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

TPP交渉大詰めで踊るリーク報道

オバマ大統領の訪日を控えて、甘利大臣がフロマンUSTR代表との交渉のために訪米し、いよいよTPP交渉が大詰めを迎えることになった。「コメ、砂糖、麦は関税維持」とか「豚肉は差額関税制度を維持して関税引き下げ」とか「牛肉は1%台への引き下げの攻防」など、さまざまなリークに基づく報道がこの1、2日なされている。こういうリーク報道の場合、政府にとって都合の良い情報を大量に流して、都合の悪い情報は隠している場合が多いので裏読みすることが必要だ。

 「コメ、砂糖、麦は関税維持」ということは、それ以外の品目はまだ米国が関税撤廃を含めた要求をしているということだろう。コメにしても、麦にしても、関税だけで輸入をコントロールしているのではなく、コメであればミニマムアクセスによる輸入割り当て、麦であれば国家貿易で水際をコントロールしている。米国という特定の国に対してこの制度に基づく優遇をするというのは、市場原理をはたらかせる自由貿易ではなくて「管理貿易」である。このようにして国内に農産物が入ってくると、国内の市場も歪んだものとなってしまうだろう。

 豚肉の差額関税制度についても、「安いものを輸入すれば関税が高くなり高いもの輸入すれば関税が安くなる」という経済原理に反する制度のため、現実には高い部位と安い部位を混ぜてコンテナ当たりの単価を高くして関税負担を安くすることが通例となっている。日本のブランド豚と競合する高級な豚肉もコンビネーションで低関税で入ってきてしまうので、水際措置としてはあまり効果のない制度となっているのが現実だ。非合理的な制度ゆえ、歪んだ経済行動を生んでいるのである。こんなヘンテコな制度を維持したまま、関税率を下げれば、ますます何のために差額関税などという制度を維持しているのかわからなくなっていまうだろう。

 唯一日本が「攻めている」はずである自動車関税の話も出てこない。おそらく相当ひどい交渉となっているのであろう。交渉というものは、煮詰まってくるとそれぞれの要求をどのくらいとったのか、譲ったのかというゲームになってしまい、お互いに何のために交渉をしているのかというそもそもの目的を見失ってしまいがちだ。米国が「コメ、砂糖、麦の関税維持」という日本の名目を保ってあげる代わりに、米国の特定業界だけが有利になる「管理貿易」を飲まされ、自動車の開放も後回し、というのでは、一体何のためにこの交渉をやっているのかわからなくなってしまうだろう。

 「何のための交渉なのか」を一番見失っているのは、総指揮官たる安倍総理そのものかもしれない。4月17日の講演でTPP交渉について、「数字にこだわることも重要だが、それを超えたもっと大きな意味があるという高い観点から、最終的に妥結を目指していきたい」と述べ、早期妥結に意欲を示したと報道されている。経済交渉は数字が全てである。ビジネスの話はビジネスとして行うのであって、日米関係などの「大局的観点」を考えて米国に譲るなどということは考えられない。おそらく総理が素人であることいいことに、後ろであることないことを囁いている悪い奴らがいるのだろう。(この同じ人たちが、民主党政権の時にも当時の菅総理野田総理、仙谷大臣などの後ろにもいた。)

 こういうギリギリの時こそ、政治家の知力、胆力が試されるものであるが、官僚組織に頼り切った甘っちょろい日本の政治家では、簡単に騙されたり、変にお利口さんになって、結果としてほとんど国益を獲得していない、ということになってしまう。記者クラブメディアが官僚組織に踊らされている以上、国民が冷静に日本の政治家の質を評価するしかない。日頃「国益国益」と勇ましい発言をしている方々の、政治家への確かな評価を期待したい。

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