福島のぶゆきアーカイブ

衆議院議員 福島のぶゆきの活動記録です

ベルリン二日目

〇ベルリン二日目。朝は早起きして、地下鉄に乗ってブランデンブルク門に。

 午前中は、連邦議会事務局のノヴァク政党資金課長からヒアリング。ノヴァク氏は、議会事務局に30年間勤務し、うち16年間は政党資金を担当してきた政党資金のプロ中のプロ。同課には10人のスタッフがいて、うち4人が法曹資格を持っているとのこと。ドイツの政党は社会的役割が極めて重要に見られているため、政党みずから収支報告をきちんとしなければ党員の理解を得られないし、メディアからも厳しくチェックされる。政党自ら頻繁に「自己告発」を行っていて、問題があれは修正している。その上で、連邦議会事務局は党員からの内部告発やマスコミからの情報を元に、問題がありそうなことについて調査するとのこと。

 私から、「政党政治家の議長の下にある議会事務局で政党の資金チェックをすることは、利益相反と見られるのではないか」と問うたところ、「私は公務員なので、国に対する義務、ドイツの法律を守る義務がある。仮に議長からの指示が違法なら、それに従うことはない。実際にこれまで、議長と私の考えが違ったことがあったが、きちんと法的に説明したら議長は私の見解を受け容れた」と、職務への誇りを毅然と語った。

 むしろ、ワイマール憲法下からナチス時代の反省から、国の機関(政府)が政党に関与することを忌避する文化があり、与野党の合意の下政党の資金のチェックを議長の下でやるべきとしているとしていて、ドイツでは政党の自律性、議会の自治が極めて重視されていることが窺えた。政党法がなく政党の公的位置づけがあいまいな日本が、なんでも細かいことまで法律で規制しようとしているのと対照的であると思った。

 午後は、連邦内務省を訪問して、ニーラジク憲法・行政法総局長、ポッシュマン政党法担当らと意見交換。私からは、午前に続いて「なぜ政治資金のチェックが行政府の内務省ではなく議会事務局なのか」と問うたところ、「政府の方が時々の政権によって変わるため、むしろ議会事務局の方がより中立である。内務省の下の第三者機関という議論もあったが、結局行政府の下では中立性に疑義が生じる」とあって、やはり議会の自治や自律性を尊重していることが窺えた。

 こうした政治文化が成立するのは、ドイツの政治が完全な政党主導となっていることにある。ドイツの国会議員の報酬は、約2,000万円で日本と同程度。それ以外に、国内の交通費やベルリンと地元の事務所経費、それぞれ事務所のスタッフの人件費、公用車などが支給される。日本のように、個々の議員が政治資金パーティーなどを開いて資金を調達する必要はなく、個々の議員が政治献金を受けた場合には、その全額を党に納入しなければならない。公費で賄える以外の政治活動は、すべて政党が負担する。つまり、政治経費はすべて公費か政党が持ち、個々の政治家が政治活動に費用を負担することはない。だから、政党の資金を監督するだけ、政治資金の透明性が図られるのだ。

 ここまで完全な政党主導政治が日本になじむとは思われないが、日本は政党についての法的な規定がほとんどなく、任意団体の扱いである。政党とは何か、政党政治とは何か、議会制民主政治の中の政党はどうあるべきか、明治憲法以来の日本の政党政治の根本から考えなければ政治改革はできないことを改めて実感した。こうした、本質的で濃密な議論の機会を持てたことは、得難い経験となった。