福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

風評被害

 ついに恐れていたことがやってきてしまた。しかも半ば人為的に。
政府は茨城産のホウレンソウから、食品衛生法の暫定基準値を上回る放射性物質が検出されたとの発表をした。先日上京中にこのような動きを聞いていた私は、食品の安全性を確保することは最重要であるが、やり方や発表の仕方をよほど慎重にしなければいらぬ風評被害を招く、ということを各所に訴えてきたが、力及ばなかった。

確かに政府は「直ちに健康に影響する値ではない」としており、科学的にみてもそのとおりではあるが、こと口に入る食品に関してはこのような発言があったとしても消費者が安心することはないであろう。茨城県といっても、原発に近い北茨城市から東京都民の住む取手市東北本線が通っている古河市までは遥かな距離がある。でも「茨城産のホウレンソウ」と言われた途端、ほぼすべての茨城産の農産物や食品は国民に不安な気持ちを持って受け取られてしまうことであろう。農産物の生産日本第二位の茨城県の経済や農村社会にとっては取り返しのつかない打撃だ。

発表されている福島原発周辺の放射線量の下では、通常とは異なるある程度の放射性物質が検出される可能性があることは予想されていた。当然、政府は事実を隠すことなく公表しなければならない。しかし問題は、ただ得られた数値をそのまま広報すればよいというものではなく、得られた数値をどのように解釈をするのかということを示さなければ、国民に対する有意な情報提供にはならないということである。すなわち、どの範囲で、どの程度のリスクが生じ、国民がどう対応すればよいかということを、いかに正確に説得力を持って伝えられるかということであった。私は、原子力安全委員会が示している指標を基に数日であわてて作った「暫定」基準で、牛乳とホウレンソウだけを、幾つかの地点だけで調べた数値を出すだけでは、国民に混乱をもたらすだけであり、政府が責任を持ってしっかりとゾーニングをした上で、この範囲まではこの程度のリスク、この範囲からは今のところ問題なし、と丁寧に説明すべきであると訴えてきた。当然健康に影響のある農産物は出荷停止にしなければならない。しかし、農林水産省厚生労働省内閣府も官邸も茨城県も誰も責任を取りたくない、というあまりにもおざなり、あまりにも責任回避意識丸見えの発表なのではなかったのか。

今回の発表後、多くの地元の関係者の皆さんから、これまでにお聞きしたことのないような切羽詰まった声で電話をいただき続けた。茨城の皆さんは東海村JCO事故後の風評被害がどんなに苦しいものであったか知っている。それだけに私も心苦しい。こうなってしまった以上は、消費者の安全を守ることを第一にしながら、風評被害を防ぐために政府に全力で取り組むことを行わせなければならない。私も全力で対応してまいりたい。

そのほかにも原子力事故をめぐる政府の対応については、かつてJCO事故の処理に2か月間家に帰ることなく従事した経験のある私からみるといろいろな思いがある。正直申し上げて、与党の国会議員としてこのような事態に接して、胸がかきむしられるような思いだ。でも、そうしたものは今回の緊急対応が一段落するまで収めておこう。とりあえず明日からも走り続けるのみだ。