〇久しぶりにエルサレムに駐在している弟の記事の紹介。
パレスチナ情勢が激変する中、パレスチナの「国民的」詩人マフムード・ダルウィーシュのことを書いている。アラブ社会では今でも詩人が職業として存在していることは、両親がかつて住んでいたシリアのホムスにダマスカスから向かうバスで隣に座った中年男に、「職業は何か?」と聞いたところ「Poet」と答えて、「Poet、really?」と再び聞いたところ、儀式などの場で即興の詩を詠むことを仕事としていると聞いて、知った。
【最後の境界が尽きた後、私たちはどこへ行けばいいのか/最後の空が尽きた後、鳥はどこを飛べばいいのか】
これは、今ガザで起きていることを予言しているとも言う。
弟はエジプトのカイロに赴任中の2008年8月13日に、パレスチナ領ヨルダン川西岸のマラッラでのこの詩人ダルウィーシュの葬儀に参列している。
【記者は当地を訪れ、ひつぎの後に続く長い列に加わった。老人は何かに思いをはせるように遠くを見つめ、木陰では若者が詩集を開いていた】
【イスラエルの極右勢力はパレスチナ人の存在を否定し、トランプ米大統領はガザ住民の強制移住をぶち上げた。だが、ダルウィーシュの詩が読み継がれる限りパレスチナ人という存在が消えることはないだろう】
と弟は書く。
ひいき目抜きにして、いい記事だと思う。単に政治的社会的に起きる事象を記述するだけでなく、パレスチナの国民的詩人を引いて論じていることが弟のジャーナリストとしての真骨頂だ。米国の影響を受けているとも言われる読売新聞で、ここまでなかな書かせてもらえない。
亡母は「学校の勉強などしなくていいから本を読め」と毎日私たち兄弟に言って聞かせていた。私は、幼少期から毎日読書三昧だったが、弟は読書も勉強もできなかった。でも、私が政治で苦労をしている間に、いろいろと知の蓄えを積み重ねたのだろう。これからも、深いところでアラブの心を伝える記事を配信してほしい。ぜひ皆さんもご一読ください。