政府のリーク情報がしばしば掲載される日経新聞の10月4日の国際面に、アメリカのシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン政治経済部長が以下のような寄稿をしている。一部を引用する。
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日本政府にも経済戦略の将来に投資する機会が今後数週間与えられている。安倍政権はTPPのカギとなる日米二国間交渉を成立させることで、(1)経済再生(2)アジア太平洋地域の連携強化(3)戦後の日本を支えてきた「ルールに基づく」国際貿易体制の推進――という「一石三鳥」の成果を得ることができる。
「高水準」で「21世紀的」な貿易協定の締結まであと一歩だが、その成否は、日本が乳製品や牛・豚肉などの重要農産品の市場開放(関税率の引き下げ)で譲歩する意思があるかどうかだ。
外国産農産品の輸入拡大による日本の代償は取るに足らない。逆に日本がTPPへの投資で得られる見返りは・・・計り知れない。
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こういうのをまさにガイアツと言う。この寄稿はおそらく米国政府の意向を受けて出されたものではななく、日本政府の官僚組織の何者かが出させたものであろう。TPPで得ようとする利益はこちらで考えるものであって、米国シンクタンクが言うのはお節介である。「日本が・・・譲歩する意思があるかどうか」などという脅しは、中東やウクライナ問題にまともに対処できない国にしては上から目線に過ぎるのではないか。まだ植民地の宗主国である気分なのか。
かつて私は「年次改革要望書」がほとんど日本人の手によって書かれ、なんとかホワイトハウスに目を向けてもらうように努力する姿を見てきた。外圧を使って自国を動かそうとする情けない政府にこの国がなってしまったのは、国の進むべき方向を決断し、国民を説得するために汗をかくを政治が不在だからこそである。こんな国ではいけないと血が沸騰したから私は、政治の世界に飛び出した。TPP賛成派も、反対派も、この数ヶ月の間にTPP交渉を巡って繰り広げられるであろうドタバタ劇の背後にある、戦後日本の情けない姿にしっかりと目を凝らし、今この国が抱える問題の本質はどこにあるのかに気付くべきではないか。
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