福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

前田ハウス

〇日刊スポーツの名物コラム「政界地獄耳」に私の名前を出してもらっているが、引用されている文章は私の書いたものではない。私がリンクしたダイヤモンドオンラインでのジャーナリスト横田由美子さんの文章だ。「政治家もどき」という言葉が、私の言葉である。

一番の問題は政治家もどきの官僚/政界地獄耳 - 政界地獄耳 - 社会コラム : 日刊スポーツ

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 私にとって、「前田ハウス」の前田中小企業庁長官は兄貴分であり、橋本行革、電力・ガス自由化と共に携わり、公私ともに濃密な時間を過ごしてきた。当時から、前田さんとは「行政改革と政治改革は一体。いずれみんなで政界に出て根本的な政治変革を成し遂げよう」と連日連夜天下国家を論じていたが、多くの仲間が政界に転身する一方で、前田さんは結局政界に出ることはなかった。

 前田さんは、当時から「よく働き、よく遊ぶ」エネルギッシュな生活を送っていて、私も夜の12時から仲間たちと盛り場に繰り出してドンチャン騒ぎをしたり、土日に温泉宿で合宿などをしていた。結婚前の私の妻も、そうした場で一緒になることもあった。しかし、それは単なるチャラチャラしたパーティーではなく、話題は常に天下国家だった。

 一方、仕事の面では、これまでの官民癒着のエネルギー政策から脱して、業界の反対を押し切って電力・ガス制度改革を成し遂げるために、業界との関係については極めて慎重だった。一見豪快で隙があるように見えて、業界に弱みを絶対に握られないよう神経質なまでに気を使っていた。私も前田さんから「業界とゴルフ、麻雀、女性の接待を伴う飲み会はご法度」ときつく言われていた。私が未だににゴルフも麻雀もやらないのは、その影響からだ。

 私が役所を辞めてから17年も経つから、その間課長、審議官、長官と登り詰めていくにつれ、前田さんは変わってしまったのかどうかは私にはわからない。今回の「前田ハウス」の件はかつての前田さんを知っている私からみれば前田さんらしいと思うし、特定の会社への利益供与をする人物になどなってはいないと信じたい。が、知らない人から見れば怪しさ満載で疑念を持たれるのはやむを得ないだろう。

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 ただ、リンクに貼ったやはり経済産業省の先輩の古賀茂明さんのように「国を亡ぼすチャラ男」とかつての同僚を貶めることは、私にはできない。古賀さんが手がけて公務員制度改革の基本的な方向性は、前田さん、元農相の斎藤健さんや私たちで構想してきたものだ。それを中途半端なままで終わらせてしまったのは古賀さんたちだ。エネルギー政策でいろいろなことをおっしゃっているが、古賀さんが役人時代にエネルギー業界と丁々発止のやり取りをしながら何かを実現したかは、寡聞にして知らない。

 私は、前田さんの青雲の志は、まだ消えていないと信じたい。政治家に成り代わって権力を振ることがやりがいと感じている官邸官僚たちとは違う、とも信じたい。政治家が無能で、意思決定と説明責任から逃げ続け、政権運営の多くを官僚が握っているがゆえに、こうした目立つ官僚が矢面に立つことになる。しかし、このような官僚がいるからこそ、新しい政策が日本では実現してきたことも事実だ。ここで、単なる「チャラ男」として役人人生を終えるには、あまりにももったいないのである。

 先日も書いたように、新型コロナウイルスへの安倍政権の対応やそこで起きたさまざまな問題を見て、特定の官僚や執政を叩くのではなく、日本の権力構造、政府のありかたそのものの本質的な問題に目を向ける必要がある。