〇民族派の若手が創刊した『維新と興亜』。まだ記事は玉石混交だが、派手な広告を毎月全国紙に打っている品のない月刊誌とは違って、まともな保守言論空間として育っていくことに期待し、応援している。
毎号水戸学に関する論考も書かれており、今号では「渋沢栄一を支えた水戸学と楠公精神」と「藤田東湖と西郷南洲」の二本立てである。そのうちの山崎行太郎先生の後者は、とてもいい。
「水戸学は、体制擁護の御用学でもなく、現状維持や立身出世を目指す「学問のための学問」でもなかった。水戸学の精神には、栄耀栄華や地位、名誉・・・などを求める世俗的野心はなかった」
まさに、水戸学の真髄を衝いている。水戸学の原典をしっかりと読んだ者なら、戦後政治を主導した自民党を支持するような生き方はできなくなってしまう。「尊王攘夷」の本当の意味を理解していれば、近年の近隣諸国に対する排外主義などは外道だとわかる。水戸学でいう「国体」とは、最近の「日本すごい!」という恥ずかしい自画自賛とは対極の考えだ。
実は現代の水戸では、水戸藩時代の水戸で何が起きたかを学ぶ場はあっても、なかなか水戸学自体を学ぶことはできない。私の師も、亡くなってしまった。浪人生活が終われば、水戸学自体をみんなで学ぶ場を作りたいと思っている。こんな時代だからこそ、一見過激なように見えて「正気」を追究しようとした愚直な水戸の思想が必ずや見直され、必要とされるだろう。