政権交代以来の懸案だった郵政民営化見直しのための法案が衆議院を通過した。私は、橋本政権の行政改革において郵政公社を設立した時からの関わりであるので、郵政問題との関わりは意外と長い。TPPや消費税増税の議論と同様に、マスコミは「賛成=改革派」、「反対=守旧派」というレッテルを、何ら政策論の背景もなく貼りがちだが、問題はそう単純ではない。私は、郵政三事業が公務員によって行われる必然性はないと思っている。そういう意味では「民営化」論者だ。しかし、民間人が行うからといって公益性がなくていいわけではない。民間企業としての効率的な経営を行いながらも、公益的価値の実現も両立させなければならないのだ。郵政事業が果たすべき公益性とは何か。いくつかあるうちのその一つは、全国あまねく山間地であろうが、離島であろうが、年金を受け取れたり、仕送りをできたりという金融サービスを提供することにある。
残念ながら小泉政権での郵政民営化は、郵便、郵貯、簡保をバラバラにして垣根を作ってしまい、このような公益性を郵便局ネットワークが発揮しづらい制度にしてしまった。国鉄はJRになってサービスが向上したと実感する国民が多いであろうが、郵便局はその逆の思いを持っている国民が多いのではないか。そうした意味では、小泉政権の郵政民営化は失敗であった。これを修正する方向に再編する郵政民営化法改正法案は、中身において不十分なところはいくつもあるが、公益性を果たす郵便局の再生へ一歩踏み出したということでは意義のあるものであると考える。
改めて繰り返すが、TPPでも、消費税増税でも、原発再稼働でも、とかく日本の政治やそれを取り巻くメディアは、物事を善悪二元論に単純化し、本質的なものを議論せず、大衆の熱狂のうちに乱暴に決定することを良しとしがちである。私は、政策のプロとして、本質論に基づく冷静な政策論議と、それを通すための熱い行動を行ってまいりたい。-----