福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

処理水放出

〇汚染水のタンクへの一時保管は、民主党政権の時に決定したことであるから、当時政権中枢にいた立憲民主党の幹部は、いずれ何らかの厳しい決断をしなければいけないことはわかっているはずだ。

 なので、処理水の海洋放出自体に正面から反対はせずに、「国民の理解も進んでいない。風評被害の具体策もない。【こうした状況での】放出を決めたことは非常に遺憾だ」とか、「具体的な説明は政府からないので判断しようがない。【判断材料が出ていないということは】反対せざるを得ない」と、【 】内のような前提をつけたポジショントークをすることになる。

 オリンピックの開催前、まさに補欠選挙期間中で衆議院の任期満了も半年後に控える政治的に微妙なタイミングでこの決断を菅政権がしたのは、よほどの責任感と関係者の調整や世論の動向に自信を持ってのことだろう。野党が将来与党になるつもりがあるのであれば、マスコミが厳しい批判をしそうな苦しい決断をどのようにするのか、自民党政権から勉強したほうが良い。少なくとも旧民主党勢よりは関係者を説得したり、世論のガスを抜いたりする術には長けている。

 すでにIAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は、日本政府の判断への支持と協力を表明している。菅総理の訪米を控えて、アメリカのブリンケン国務長官も支持を表明している。福島県の浜通りの地元自治体も、大きな異を唱えていない。こうした状況の中での中国や韓国からの反発は、国内世論を鎮めるためにはむしろプラスにはたらくだろう。

 漁協関係者は反対の最先鋒であるが、全漁連の岸会長が先日官邸を訪れている時点ですでに水面下での調整は終わっているはずだ。全面的に反対なら、政府が呼びかけても官邸には行かない。風評被害対策やその他の漁業界への金銭的な支援など、大枠は話がついているのだろう。今はガスを抜いている段階だ。野党が「ここで反対しておけば漁業票がついてくる」と思っても、それは甘い期待だろう。

 このように関係者の調整が進んでくると、やがて強硬に反対する人は限られた人たちになってくる。そうすると多数の一般国民は、絶対的反対派から離れて行って、この問題はやがて沈静化していく。いわゆる「迷惑施設」を作るときに世論対策で講じる常套手段だ。当然、十分な情報公開と念入りな説明を、手続きに瑕疵なく繰り返すことが大前提のことだが。

 この間総理日程を眺めていると、安藤経済産業事務次官が頻繁に首相と面会をしていた。農林水産事務次官と共に首相執務室に入るときもあった。安藤次官は、難しいことでもしっかりと汗をかく仕事師だ。梶山経済産業大臣も、自らの政治的な損得を抜きに仕事をする真面目な方だ。ここ数日のセンセーショナルな報道の裏では、これまで見えないところで多くの人が、長い時間をかけて膨大な汗をかいてきている。

 今の野党が政権を取るためには、そうした見えないところでの膨大な汗に価値を見いだすかどうかが、問われることになるだろう。そして、野党を支援する皆さん方も、今回のこの判断への是非は別として、政権を担うということは世論に賛成されなくても決断をしなければならない場面が必ず来るということであり、そうした場面でどのように対処するのか、その能力こそが権力を維持するために必須のものであるということをご理解していただかなければならない。

 なお、こうした難しい話とは別に、私は処理水が放出されようがされまいが、福島県沖でとれるシラウオやヒラメなどの美味しい魚を食べ続けたい。

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