福島のぶゆきアーカイブ

これまでにWebで公開したものの記録です

官僚たちの夏③

 小難しく理屈っぽい話ばかりで恐縮ですが、最近の永田町の風景の最後です。本日いわゆる「6次産業化ファンド法案」が政府案修正の上で衆議院を通過いたしました。6次産業化とはこれまでのように田畑を耕してその生産物を納めるだけの農業(一次産業)から、みずから生産物を加工して(二次産業)、それを販売する(三次産業)ことまでを一体として行うことによって、農業を付加価値の高い産業にしていくことで、私たちの政権の農政の一つの大きな柱となるものです。たとえば、これまでコメだけを作っていてもなかなか一家が食べていくだけの収入を得ることは難しいのですが、このコメからコメ粉をつくってパンを焼き、町の中でパン屋さんを作ってこれを売るというような事業が生まれることを期待しているのです。こうしたことが実現すれば、地方において農業を核とした新たな産業群が生まれ、地域の活性化につながるものと考えます。

 こうしたことを推進するための従来の農政はどちらかと言えば補助金行政が中心で、GATTウルグアイ・ラウンド対策費の例でよく批判されるように、補助金行政は十分な効果を上げないことも多々あります。それは、補助金の交付というのは役所の裁量や政治家の介入の余地を生みがちで、現場を知らない、ビジネスをやったこともない官僚の判断は必ずしも合理的で正しいとは限らないからです。6次産業化というのは新しいビジネスを生み出すことですから、これまでのような補助金によるもののほかに、法人への出資という出資者に有限責任とその見返りとしてのリターンを生む方法によって、マーケットの目を通して事業の芽を生みだし育てていくというのが、本来の6次産業化ファンドの役割です。

 一方で、こうしたマーケット主導による産業の育成には、資本の論理によって、農山漁村がこれまで持っていた景観の保全や集落での共同作業などの経済合理性だけでは持続しえないものを破壊してしまう、という批判、恐れもあります。私はそのような議論も傾聴に値すると考えます。自民党から、そうした懸念を払拭するための修正案が示され、今回これがそのまま成立することとなりました。ただし、問題が多すぎます。政府案では国が農林漁業成長産業化支援機構(ファンド)に出資をし、同機構が6次産業化事業を行おうとする者に出資をしたり、あるいは6次産業化を支援する自治体や金融機関・JA等が出資して作ったサブファンドに出資することとされております。この政府案を、自民党案では、
1.出資対象となる事業者は、あらかじめ6次産業化法に基づいて農林水産大臣の認定を受けた事業者に限定すること
2.ファンドが事業者に出資したり、ファンドがサブファンドに出資する場合、個別に農林水産大臣の事前認可が必要であること
3.ファンドからの出資に加えて財政・税制上の支援措置を講じること
などの修正を加えるものとなりました。

 これでは官僚の裁量に基づいて認められたものにしか出資できず、実質上の補助金と何ら変わりはありません。むしろマーケットによるガバナンスが十分に効かない責任体制が曖昧なものとなってしまいます。もし出資先のビジネスが失敗しても、財政上の支援が講じられる可能性がある条文があるので、モラルハザードを生む可能性があり、将来の国民負担さえ必要となる案であると考えます。この修正案は自民党農林水産省が協議をして衆議院法制局で作成したとのことですが、自民党の政府案への懸念は理解するものの、出来上がった修正案は農林水産省の権限を増やす官僚へのエサとしか思えません。ギリギリまで党内で議論をさせていただきましたが、消費税法案の時と同様に、自民党案を一字一句変更してはいけないということなので、やむを得ず賛成をさせていただきました。

 ねじれ国会の下では法律案を通すためには野党との協議を丁寧に行っていかなければなりません。しばしば政府の出す法案は修正して成立させることとなります。こうした作業は、高度な専門性が要求される作業です。相手の自民党はこれまでも官僚頼りの政権運営をしてきた党ですから、結局野党案にも官僚の知恵が使われることととなります。結果として、与野党で協議すればするほど、官僚の出番が増えて、官僚にとって都合のよい法案になっていくというのが、今のねじれ国会の実態です。私が社会人になってこの業界に入ってから、もっとも今が強い官僚主導になってしまっているというのは時代の皮肉としか言いようがありません。これは官僚が悪いのではないのです。政治がしっかりとしていないことが悪いのです。こんな政治は、国民の皆さんが3年前の総選挙で望んだものではないでしょう。国民の手に政治を取り戻すために、もう一度「真の政権交代」が必要なのかもしれません。3回にわたって小難しい最近の政策論義を紹介することで、いかに政治の変革が必要なのか私なりの考えを述べさせていただきました。

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